2008 Fiscal Year Annual Research Report
フランス近・現代における祝祭・スペクタクル・舞台芸術と共同体の関係についての考察
Project/Area Number |
08J11471
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
熊谷 謙介 The University of Tokyo, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | フランス / 文学 / 詩 / 地域研究 / 思想史 / 哲学 / 宗教学 / 政治学 |
Research Abstract |
第一に、マラルメ研究においては、フランス文学研究の最高権威である『フランス文学史研究誌』に研究論文を掲載することができた。マラルメの自然についてのこの論文に対して、内外を問わず多くの研究者から反響があった。また日本フランス語フランス文学会関東支部大会においてマラルメの宗教観について発表し、学会誌に掲載された。そしてこれらの研究発表を含みこんだマラルメ論『マラルメによる祝祭:共和国、カトリシスム、シミュラークル』が、2009年2月にフランスの出版社ラルマッタン社から出版された。2006年6月にパリーソルボンヌ大学で口頭審査を受けた博士論文を元にしたこの著作では、従来のフランス文学研究においてしばしば看過されてきた諸領域(芸術、政治、宗教、哲学、経済、都市論)を横断し、「祝祭」という新しい視点から詩人の未知の側面を明らかにすることを目指した。また研究をこれで完結させたわけではなく、日本フランス語フランス文学会で口頭発表をし、マラルメとデカルトの関係の新しい側面を浮かび上がらせたと評価された。さらに、マルシャル氏の著作『マラルメの宗教』の翻訳(共訳)も佳境に入り、水声社からの今年中の出版を目指して努力している。 第二に、マラルメ研究・祝祭研究にとどまらない研究として、19世紀末独仏交流史についての論文を執筆、そして20世紀フランス文学を代表する二人の批評家、ブランショとバルトについて論じたクリストフ・ビダン氏の論考の翻訳を発表した。前者はマラルメにおけるハルトマンの影響を論じた論考の続編をなすものであり、広くフランス象徴主義全体の文脈からドイツ観念論の移入の問題を論じたものである。このような多方面にわたる研究を通じて、共同体についての思考や、芸術が社会において果たす役割についての考察といった現代にも引き継がれる問題に、新たな視点を提示することが、本研究の最大の目的である。
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Research Products
(5 results)