2009 Fiscal Year Annual Research Report
感染宿主細胞の分化と連動するヒトパピローマウイルス複製機構の研究
Project/Area Number |
08J11478
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Research Institution | National Institute of Infectious Diseases |
Principal Investigator |
中原 知美 National Institute of Infectious Diseases, 病変体ゲノム解析研究センター, 特別研究員(PD)
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Keywords | HPV / ゲノム複製 / Cdt1 / Geminin / MCM |
Research Abstract |
高リスク群ヒトハピローマウイルス(human papillomavirus : HPV)は、子宮頸癌の原因ウイルスである。HPV生活環は、感染標的細胞である表皮の形成と密接に連動しており、表皮細胞の分化に応じてウイルスゲノム複製を3段階に切り替える。本研究では、このようなHPVの生活環を支える分子機構を明らかにすることを目的とし、HPVゲノムと宿主細胞のDNA損傷修復系やDNA複製機構との相互作用に焦点をおいて解析する。2年目の本年度は、潜伏持続感染状態におけるHPVゲノム複製と宿主細胞のゲノム複製がどのように連動しているかについて調べた。具体的には、HPV感染患者から樹立された細胞株でHPVゲノムをエピゾームとして維持する表皮細胞株に、染色体ゲノム複製を制御するタンパク質を導入して、それらのHPVゲノム複製におよぼす影響を調べた。Cdt1は、MCMヘリカーゼ複合体をゲノム複製起点に誘導するタンパク質であり、すなわち染色体DNA複製の開始を制御する。そのCdt1を過剰に発現させると、HPVゲノムのコピー数が増加することを見つけた。一方で、Cdt1と相互作用し、その働きを抑制するタンパク質であるGemininを過剰に発現させると、HPVゲノムコピー数が減少した。このことから、潜伏持続感染時におけるHPVゲノム複製は、宿主細胞のゲノム複製の制御因子によって同様に制御されている可能性が考えられた。さらに、クロマチン免疫沈降法を用いた解析から、宿主細胞のORC(origin recognition complex)がHPVゲノムの特定の領域に結合することが示唆された。HPVは、DNAヘリカーゼであるE1を独自にコードしており、HPVゲノム複は、宿主細胞の染色体DNA複製から独立した機構により複製すると考えられてきた。しかしながら、本年度の研究成果から、少なくとも潜伏持続感染時におけるHPVゲノム複製は、宿主のDNA合成機構におそらく完全に依存し、その制御をうける可能性が考えられた。
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