2009 Fiscal Year Annual Research Report
魚類精原幹細胞培養技術の開発 -シャーレ内の細胞から魚類個体を作る-
Project/Area Number |
08J11532
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Research Institution | Tokyo University of Marine Science and Technology |
Principal Investigator |
識名 信也 Tokyo University of Marine Science and Technology, 海洋科学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 魚類精原幹細胞 / 培養法 / 精原幹細胞移植技術 / ニジマス |
Research Abstract |
昨年度の研究では、精原幹細胞を培養下で1カ月以上にわたり維持することを可能にしたが、その全体数を増加させることは困難であった。そこで今年度は、精原幹細胞の数を無限に増殖させる培養環境を整えることを目的とした研究を行った。市販の各種栄養性添加因子や他生物種に由来する増殖因子、作成したニジマス由来組換え体増殖因子、ニジマス血清、および各種魚類体細胞株を支持細胞として用いた場合の有効性を検討し、精原幹細胞の生存・増殖を促す因子の探索を試みた。実験には未成熟精巣より濃縮した精原幹細胞を用いた。その結果、市販の脂肪酸濃縮液を0.1%~1%濃度で培養液へ添加した場合に、精原幹細胞の生存が、対照区と比較して1.2倍程度促されることが明らかとなった。また、支持細胞としてニジマス生殖腺由来細胞(RTGおよびTF)、形質転換脾臓細胞株(RTS)、肝臓細胞株(SOB)を用いた場合に、精原幹細胞数が培養14日目において1.2~1.6倍に増加することが明らかとなった。さらに、生殖細胞のマーカー遺伝子であるvasa遺伝子の発現に伴うGFP蛍光は培養下においても良好に維持されていた。以上の結果より、本研究により同定された各因子は魚類精原幹細胞の培養系に有効であることが示唆された。本研究では結果として、精原幹細胞の増殖を長期的に促すことができなかったものの、精原幹細胞の培養、および移植に関する研究過程の副産物として、精原幹細胞の移植成功率を高める技法の開発に成功した。短期間培養を施した精原幹細胞は、移植後20日目において、対照区の非培養精原幹細胞よりも、10~15倍程度多く宿主生殖腺へ生着することを明らかにした。また、移植成功率は、対照区では60%程度であったのに対し、ほぼ100%にまで改善された。本技法は精原細胞移植技術を用いた代理親魚養殖や絶滅危惧種の保全において有用な技術となることが期待される。
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Research Products
(4 results)