2008 Fiscal Year Annual Research Report
糖尿病合併症の発症機構としての糖化最終産物によるNO生合成の異常制御
Project/Area Number |
08J11572
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
ライ インリン University of Shizuoka, 食品栄養科学部, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 糖尿病合併症 / 糖化最終産物 / 一酸化窒素合成酵素 / 2型糖尿病ラット |
Research Abstract |
本研究は、近年増加している糖尿病とそれに伴う血管合併症の発症機構を、タンパク質の糖付加反応により生じる糖化最終産物(AGEs)と、血管内皮由来弛緩因子一酸化窒素(NO)の相互作用の観点から解明することを目的としている。 本年度は、糖尿病で増加するAGEsのNO産生制御関連酵素に及ぼす影響について検討した。特に、内因性NO合成酵素阻害剤asymmetric dimethylarginine(ADMA)と構造的に類似するAGEsに着目し、数種のアルギニン由来のAGEsを合成した後、3種のNO合成酵素(NOS)、アルギナーゼ、ADMAを分解する酵素dimethylarginine dimethylaminohydrolase(DDAH)の活性に及ぼす影響を調べた。その結果、carboxymethylarginine(CMA)をはじめ、carboxyethylarginine(CEA)、N^δ-(5-hydro-5-methyl-4-imidazolon-2-yl)-ornithine(MG-H1)などのAGEsがこれらの酵素活性を弱いながらも阻害することがはじめて明らかとなった。また、自然発症2型糖尿病モデルラット(OLETF)の腎臓組織を用いて、NOS産生制御に関わる酵素活性を調べたところ、糖尿病が重篤化して合併症を併発しやすい時期において、NOS及びDDAH酵素活性が明らかに低下することを見出した。一方、上述した各種アルギニン由来のAGEsのLC/MS/MSによる高感度分析法を確立した。今後OLETF糖尿病発症前後の血漿試料を用いて化合物の分析を行う。 このように、本研究では糖尿病血管合併症の発症と進展におけるAGEsの役割を、NO産生制御メカニズムの観点から解明を試みており、その成果は、糖尿病合併症の予防と治療戦略の開発の上で役立つものと考えている。
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