2010 Fiscal Year Annual Research Report
がん細胞におけるテロメアの維持機構とテロメラーゼの新たな生理機能
Project/Area Number |
08J11574
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Research Institution | Japanese Foundation For Cancer Research |
Principal Investigator |
平島 匡太郎 (財)癌研究会, 癌化学療法センター分子生物治療研究部, 特別研究員-PD
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Keywords | テロメア / がん細胞 / 細胞分化 / マイクロアレイ / 異種移植片 |
Research Abstract |
真核生物は染色体DNAを完全にはコピーできず、複製のたびに末端配列のテロメアが短くなる。一方ほとんどのがん細胞ではテロメラーゼが活性化しており、テロメア維持による無限の増殖を実現している。ところがテロメラーゼが活性化しているにもかかわらず、がん細胞は周辺正常組織の細胞よりもテロメアが短い。がん細胞があえて短いテロメアを保持する理由はあるのか、あるとすればどのような分子が関与しているのか、その詳細は不明である。そこで本研究では、がん細胞が短いテロメアを保持することの合目的性を明らかにすることを目的とした。 ヒトがん細胞株の中でも特にテロメアの短い前立腺がん由来の培養細胞PC-3のテロメラーゼ活性を増強し、テロメアの伸長した株を樹立した。まずテロメア伸長による遺伝子発現への影響をGeneChipマイクロアレイにより解析すると、細胞外マトリクスや接着といった、細胞間のクロストークに関与すると思われるカテゴリがうかびあがった。そこで多細胞かつ多彩な環境下での挙動を調べるため、テロメアが伸長したがん細胞株をヌードマウスの皮下に移植し組織切片を観察すると、テロメア伸長株において腺管形成すなわち分化していることが明らかとなった。さらにCre-loxPシステムを構築し、テロメア長のみが対照群に比べ伸長している株についても同様の結果が得られ、テロメラーゼ活性増強の有無にかかわらず、テロメアの伸長にともない分化することが明らかとなった。またin vitro網羅的遺伝子発現解析により、分化に関与していると考えられる分子としてRIF1およびCCND1という、未分化に寄与する因子がテロメア伸長にともない減少していることを見いだした。以上の結果は多様な環境下での分化誘導というこれまでにないアプローチであることから、新しいがん治療の端緒となる可能性が期待される。
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Research Products
(1 results)