2008 Fiscal Year Annual Research Report
別本を中心とする源氏物語諸伝本の相関・総合的研究-国冬本源氏物語からの展開と探究
Project/Area Number |
08J40028
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Research Institution | National Institute of Japanese Literature |
Principal Investigator |
山口 優子 (越野 優子) National Institute of Japanese Literature, 国文学研究資料館, 特別研究員(RPD)
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Keywords | 源氏物語 / 本文研究 / 国冬本 / 韓国語 / 注釈書 / 高松宮家本 / 翻訳 / 多変量解析 |
Research Abstract |
実施者の研究計画は、1源氏物語の多くの伝本のうち、鎌倉末期写十二冊と室町末期写四十二冊の計五四冊からなる「国冬本」という伝本と、室町期に流通した高松宮家本の、最後の十帖である宇治十帖(橋姫〜夢浮橋巻)における顕著な本文の類似に着目、両者の比較対照を行い、データ分析と考察を行うこと・2国冬本の存在を国内外に周知させ、源氏物語は複数有ることを周知させる為に、翻刻・注釈・現代訳・外国語訳・考察等を付した試作版を論文の形で刊行する、の2つである。計画1では、本文の前に書誌事項を調査した。高松宮家本は耕雲本を祖本とする転写本であり、耕雲本の特徴(耕雲自署と跋歌)を有しているが、国冬本東屋巻巻末に「耕雲山人題」とあり、これが高松宮家本と同じ耕雲本系統の金子氏本・宿木巻の自署と一致すること、次に国冬本宿木巻跋歌記載の一丁が(自署が無いだけで)高松宮家本のそれと、践歌及び<かお鳥>の記載など酷似していることを確認した。書誌的にも両者の相関関係を確認した上で本文の対照に入った。膨大な量なので(1)まず橋姫巻の最初の十丁で国冬本の独自本文箇所48を抽出(2)これと高松宮家本を対照したところ17の一致をみた。独自本文箇所だけで1/3強の類似数なのでやはり本文も強い相関があることを確認できた。(3)以後進める為にどうしても大量のデータ処理の手法の工夫が必要と分かり、そこで統計学的解析の手法を、新しい係数を追加した形で行うべく凡例から活字化中である。計画2ではまず国内は、より有益な結果を出すために国冬本の独自の物語世界が顕著な箇所(桐壷・少女・柏木・鈴虫巻等)に絞ってそれを基に注釈と現代語訳を行った(活字化済)。更に国外での周知の為ソウルで、源氏物語の定本以外の初の外国語訳を国冬本で行った(五月刊行予定)。更にこの七月には台湾で発表予定である。
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Research Products
(4 results)