2011 Fiscal Year Annual Research Report
ゲノム不安定化の起源―チェックポイントと修復のクロストーク―
Project/Area Number |
08J40037
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中川 浩子 京都大学, 放射線生物研究センター, 特別研究員(RPD)
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Keywords | DNAアルキル化損傷 / 放射線高感受性 / NBS1 / ユビキチン化 / チェックポイント / DNA二本鎖切断修復 / 核内フォーカス / MMS |
Research Abstract |
放射線高感受性ナイミーヘン症候群の原因遺伝子NBSIは放射線によるDNA二本鎖切断修復と細胞応答に機能していることは明らかとされていたが、(1)哺乳細胞のNBS1を完全に欠失すると生存できないことや(2)NBS患者細胞にもNBS1のタンパク質断片を発現し、NBS1分子機能を残していると考えられること(3)NBS1がUVによるDNA損傷応答に機能することから未知機能を有していると考えられる。本研究においてはDNAにアルキル化損傷や塩基損傷に対するNBS1の細胞制御を観察した。 1.NBS1はアルキル化損傷修復と細胞周期チェックポイントに重要な役割を担う。NBS1欠失細胞はMMSとMNNGと過酸化水素に対して感受性を示す。またNBS1ノックダウン細胞にMMS処理後、チェックポイントキナーゼCHK2のリン酸化の結果からチェックポイント活性が低下している。さらにNBS1は放射線照射だけでなく、MMS処理によっても核内でフォーカスを形成した。 2.NBS1はDNAアルキル化損傷時のDNA複製クランプローダー因子RFC2のユビキチン化を制御する。NBS患者細胞のクロマチン画分にはMMS処理後、RFC2のユビキチン化によるmobility siftが見られなかった。NBS1はDNA二重鎖切断時のH2Bと紫外線損傷時にPCNAのユビキチン化に関わっている事が報告されているが、それらのDNA損傷時にRFC2のユビキチン化されるか調べた結果、MMS処理時のNBS1相補細胞のクロマチン画分においてのみ見られることがわかった。さらにNBS1はMMS処理によってRFC2と核内フォーカスにおいて共局在することが解った。 3.NBS1はRAD18ユビキチンライゲースによるRFC2のユビキチン化に必要である。DNAアルキル化損傷時RFC2のユビキチン化はRAD18によって行われる。NBS患者細胞とNBS1相補細胞でRad18とRFC2の共沈を確認した結果、NBS1相補細胞においてのみRFC2と共沈するRad18とNBS1のバンドが見られた。またRad18欠失細胞はMMSに対して感受性を示す。NBS1の部位欠失変異体を用いてMMSへの感受性を調べるとRad18結合部位欠失したNBS1変異株ではMMSへの高い感受性を示す。 本研究はNBS1がDNAアルキル化損傷修復においても重要な機能をもつことを明らかとした。
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