2009 Fiscal Year Annual Research Report
社会性昆虫に内在する自己組織化機構と繁殖闘争の関係
Project/Area Number |
08J40128
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
菊地 友則 University of the Ryukyus, 農学部, 特別研究員(RPD)
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Keywords | 自己組織化 / コロニーサイズ認識 / ポリシング / トゲオオハリアリ |
Research Abstract |
膜翅目の社会性昆虫では、女王とワーカーの間に雄生産をめぐるコンフリクトが潜在的に存在すると考えられている。しかしながら、一般に女王存在下ではワーカー自身による産卵はみられない。近年、これはワーカー間の相互産卵規制(ワーカーポリシング)によるものと推察されている。多くの研究者がワーカーポリシングの進化を血縁度から説明しようと研究を進めてきたが、確定的な結論には至っていない。これまでの研究は、ワーカー産卵やポリシング行動発現に影響する女王存在情報に関して、全てのワーカーが同じ情報を共有していると仮定し進められてきた。しかしながら、最近の研究から情報透明性の制約や情報獲得のコストの存在が示され、これが理論的予測と実証データの不一致を説明する要因の一つとみなされている。南西諸島産トゲオオハリアリには、ワーカーポリシング行動がみられ、その強度はコロニーサイズによって変化する。血縁度だけに基づいた従来のワーカーポリシング理論ではこの現象を説明できない。そこで本研究課題ではワーカー産卵行動に影響をあたえる女王存在情報の伝達システムとその特性を明らかにし、ワーカーポリシングのコロニーサイズ依存性の至近メカニズムを考察することを目的とした。具体的には、コロニーサイズの変異に対応して女王存在情報の伝達システムが安定的に機能するために必要と考えられるフィードバック機構を想定し、各要素を検証した。その後、この伝達メカニズムがワーカーポリシング行動の発現に及ぼす影響を調査した。各要素の検証は全て終了し、予測通りの結果がえられた。すなわち、女王との接触間隔に依存したフィードバック機構が存在し、これがワーカーの女王存在情報の獲得に関するコロニーサイズ変異を引き起こした結果、ポリシング行動の発現に影響していた。
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