2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08J40135
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
浅田(土屋) 有里子 Waseda University, 文学学術院, 特別研究員(RPD)
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Keywords | 沙石集 / 無住道暁 / 妻鏡 |
Research Abstract |
(1)『沙石集』伝本のうち、岩瀬文庫本について考察を進めた。所蔵する愛知県西尾市岩瀬文庫に赴き、原本の書誌的事項の確認、内容の調査を行った。 (2)『沙石集』編者である無住道暁の内面性は『沙石集』諸伝本の内容や改訂に深い影響力を持つため、無住自身の宗教者としての側面の解明を必要とする。そこで無住と北条得宗家との関わりを考察した。『沙石集』・『雑談集』には一僧侶としては不自然なほど、時の権力者である北条得宗家を意識した記述が多く見受けられる。北条得宗家への強い興味の源を、無住の生い立ち、時の鎌倉北条政権をめぐる宗教的事情に照らして考察した。その際無住は<相州禅門>という言葉を多用し、従来それは北条時頼個人を指すと理解されてきたが、<相州禅門>と呼称される人物は二人おり、無住の北条得宗家への関心は決して時頼個人に向けられたものではなく、北条得宗家という一つの家督を継続的に注視したものであることを解明した。 (3)無住の内面性の探求という意味で、従来無住作か否かが問題視されてきた『妻鏡』の成立事情を考察した。『妻鏡』に特微的に見られる女性関連説話を検討したうえで、それは『沙石集』や『雑談集』での女性に関する無住の口吻と異なるものであることを証明、血穢を問題視すること、立山曼荼羅の原話とも理解できる特殊な逸話を含むことから、立山に赴き、立山曼荼羅に関する諸資料を収集吟味したうえでの考察となった。最終的に『妻鏡』は無住より後世、無住自身も関連を持ち、西大寺蔵本『妻鏡』の奥書にも記されている京都の観勝寺付近において、無住仮託め一書として成立した可能性を指摘した。
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Research Products
(2 results)