2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08J40135
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
浅田 有里子 (土屋 有里子) Waseda University, 文学学術院, 特別研究員(RPD)
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Keywords | 沙石集 / 無住道暁 / 無住和尚700遠忌 |
Research Abstract |
(1)『沙石集』流布本系伝本である岩瀬文庫本についての考察を完了した。考察の結果、岩瀬本は岩瀬本独自系統である巻二・巻三・巻四と、はほぼ慶長本と同様の系統である巻一・巻五・巻六・巻七・巻八・巻九・巻十の複雑な二系統を併せ持った写本ということになったが、京都大学附属図書館蔵の無刊記古活字本(以下「無刊記本」)が、岩瀬本と完全に同様の構成、本文を持つことが判明し、岩瀬本はこの無刊記本を転写した写本であり、構成の複雑さは、無刊記本の構成自体に遡ることになった。 (2)(1)と同じく流布本系伝本である長享本についての考察を完了した。長享本の特異性は、話順、構成、語句、異文等多岐に渡っており、刊本に比しては未整理の状態であり、他本にない個性的な表現を含むとの結論を得た。無住自身の二回の大改訂のうち、一回目にあたる永仁三年の改訂を受けた後、独自の方向性を持ったと推測され、浄土宗的な色彩が多少付加されているとの印象を受ける部位もあることから、その過程に無住以外の人物による加筆等を考慮する必要もある伝本であることが解明された。 (3)流布本系伝本である東大本(東京大学国語研究室蔵)、神宮本(神宮文庫蔵)について基礎調査を継続した。 (4)無住和尚700遠忌に向けて、『著作(『沙石集』・『雑談集』・『聖財集』)伝本一覧』(奥書識語集成)の作成を進め、長母寺檀家総代道木正信氏所蔵の平仮名本『沙石集』についての基礎調査をほぼ終え、同時に新出の大永年間写『沙石集』(国文学研究資料館蔵)について調査を開始した。
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Research Products
(2 results)