2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08J40135
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
浅田 有里子 (土屋 有里子) 早稲田大学, 文学学術院, 特別研究員(RPD)
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Keywords | 『沙石集』 / 無住道暁 / 『雑談集』 |
Research Abstract |
(1)申請者がこれまで従事してきた『沙石集』全伝本の研究において、主要写本の調査を完了し、考察と系統化を進めた。同時にこれまで伝本論の中で等閑視されてきた『沙石集』の古活字本、整版本についても可能な限り原本を調査し、従来の誤りを正すと共に新見を加えた。同一人による『沙石集』の全伝本研究はこれまで存在せず、各伝本の精緻な内容考察と伝本間の相互関係の解明は、『『沙石集』諸本の成立と展開』として一書にまとめることになり、その準備にも力を注いだ。上梓の暁には、『沙石集』という作品の成立と享受の諸相が解明され、日本文学以外でも受容が高い作品であるが故に、資するところは大きいと思われる。 (2)2011年10月に、無住道暁の700年遠忌を迎えるため、学会等でも動きが活発であった。その中で、長母寺檀家総代所蔵の道木本についての考察を行い、10月の仏教文学例会において口頭発表をした。12月には無住をテーマとした研究集会が名古屋大学で開催され、多様な分野の研究者が一同に集った場において、無住とその作品、思想について有意義な討論を行った。また『無住道暁著作伝本一覧-奥書識語集成-』を作成するため、貴重な伝本を所蔵する関係諸機関へ赴き調査を行い、中でも名古屋の真福寺蔵巻四断簡『沙石集』については、新たな問題点と価値を見出すことが出来た。 (3)無住の女性の描き方については、伝本間でも異同があり、重要なキーポイントであるが、それを無住晩年の著作である『雑談集』から考察し、当時救済の対象に成り難かった女性に対しても、無住が男性同様に救済と往生を認めていたことを明らかにした。従来女性史の分野で、『沙石集』の特定の記事をもって女性蔑視とする風潮があったが、伝本論という堅実な土台を基にして、そうした評価に一石を投ずることが出来た。
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Research Products
(2 results)