Research Abstract |
フラーレン誘導体による高効率・スイッチ可能な光電変換素子の開発を目的として,フラーレン-金属複合体の合成に着手し,その光電変換特性について詳細に調べたので,以下にその成果について報告する. 本研究では,電極と強固な化学結合を行うためにカルボキシル基を末端有し,分子同士の凝集を避けるため,剛直な骨格かつ高い電子移動効率を有する5個のπ共役系のスペーサーを用いたフラーレン誘導体を分子設計しその合成に成功した.具体的には,C_<60>(C_6H_4COOH)_5Me(1),C_<60>(C_6H_4C_6H_4COOH)_5Me(2),Fe[C_<60>(C_6H_4COOH)_5](C_5H_5)(3),Fe[C_<60>(C_6H_4C_6H_4COOH)_5](C_5H_5)(4),Ru[C_<60>(C_6H_4COOH)_5](C_5H_5)(5),Ru[C_<60>(C_6H_4C_6H_4COOH)_5](C_5H_5)(6)である. まず,1を自己組織化法により透明導電性電極(Indium-Tin Oxide,ITO)に固定し,アスコルビン酸(AsA)をフラーレンに対する電子ドナーとして共存させた系のセル,ITO/1/AsA/Pt,を作製し(「/」は界面を示す),セルに光照射を行った結果,光電流発生効率は7.2±0.8%であった.光電流発生のメカニズムは,1の光吸収により励起状態が生成し,アスコルビン酸が励起状態の1に電子を渡した後に,電極への電子の移動として,説明できる.なおスペーサーの長い化合物2やルテニウム錯体5,6についても,同様の光電流応答を確認した.続いて鉄錯体(バッキーフェロセン)について報告する.CpFeC_<60>Ph_5は光吸収後に電荷分離状態(フラーレンラジカルアニオン,フェロセン部位にフェロセニウムカチオン)が生じることを報告している.このような分子に対して,メチルビオローゲン(MV)を共存させた系,ITO/3/MV/Pt,を作製し光照射を行った結果,光電流発生効率は2.8±0.8%であった.光電流発生のメカニズムは,3の光吸収により電荷分離状態が生成し,電極からフェロセニウムに電子移動が起こり,フラーレンラジカルアニオンからメチルビオローゲンへの電子移動として説明できる.化合物4についても同様の光電流応答性を確認した.このように新規フラーレン誘導体を電極上に固定することで,光電子移動効率の高い系を構築することに成功した.
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