2010 Fiscal Year Annual Research Report
ゼブラフィッシュ初期発生における転写伸長因子P-TEFbの役割
Project/Area Number |
08J55171
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
種田 拓也 東京工業大学, 大学院・生命理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ゼブラフィッシュ / 転写伸長 / P-TEFb / DSIF / 背腹軸 / 赤血球 / gata1 |
Research Abstract |
本研究は、ゼブラフィッシュ初期胚を材料にして、転写伸長因子P-TEFbが個体発生において果たす役割を解明することを目的とした。P-TEFbは、RNAポリメラーゼIIおよび転写伸長因子DSIFをリン酸化することで転写伸長を促進することが知られる基本転写伸長因子の一つである。前年度では、P-TEFbの2つのサブユニットCDK9およびCyclin T1をゼブラフィッシュ初期胚においてノックダウンし、「間脳の腹側化」と呼ばれる中枢神経系の背腹軸パターニング異常に特徴的かつ特異的な表現型が引き起こされることを見出した。本年度では、P-TEFbの主要な標的の一つであるDSIFに関する解析を行った。DSIFのサブユニットSpt5のノックダウン実験およびリン酸化部位置換変異体を用いた解析により、P-TEFbがDSIFのリン酸化を介して間脳の背腹軸パターニングに重要な役割を果たすことが示唆された。これらの研究成果については現在まとめる段階にある。同時に、DSIFが個体レベルで果たす役割を明らかにするためにSpt5ノックダウン胚のマイクロアレイ解析を行った。DSIFはgata1の発現制御を通じて赤血球分化に重要な役割を果たすことが明らかになった。また、P-TEFbによるDSIFのリン酸化がgata1の発現に重要であることが示唆された。この研究成果については、Genes to Cells誌(2011 Feb ; 16 (2) : 231-42)において発表した。このように本研究成果は、基本転写伸長因子であるP-TEFbがDSIFのリン酸化を介して特定の組織および器官の発生・分化において重要な役割を果たすことを見出した。これまで生化学および細胞レベルの解析が中心であった基本転写伸長因子の機能に関して、個体レベルの知見を提供する成果が得られたと考えている。
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Research Products
(1 results)