2008 Fiscal Year Annual Research Report
フェムト秒レーザー誘起タンパク質結晶核発生の原理解明と高度化
Project/Area Number |
08J55381
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
村井 良多 Osaka University, 大学院・工学研究科, 特別研究員DC2
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Keywords | タンパク質 / 結晶核発生 / フェムト秒レーザー |
Research Abstract |
レーザー誘起タンパク質核発生をより有用な技術にするため、そのメカニズム解明と手法の高度化に取り組んでいる。これまでに、核発生のレーザー光強度やパルス時間幅依存性を調べ、あるしきい値強度以上でのレーザー照射により発生するキャビテーションが核発生を誘起しうることを明らかにした。そこで本年は、より効果的なレーザー照射条件の探索を目的とし、キャビテーションの挙動に大きな影響を与えうる粘性をパラメータとして、核発生への影響を調べた。粘性はアガロースゲルを用いて制御を行った。アガロースゲルを1%添加した高粘性リゾチーム溶液にレーザー照射を行った結果、通常の低粘性リゾチーム溶液よりも低過飽和度で核発生が誘起された。さらに、蛍光低分子を修飾して可視化したリゾチーム分子を用いて、レーザー照射直後(〜μs)におけるゲル中のタンパク質濃度分布の測定を行った結果、キャビテーションの収縮時に蛍光リゾチーム分子の凝集と思われる強い蛍光信号が観察された。これより、キャビテーションの収縮過程が分子を濃縮し、核発生を促進するというメカニズムが示唆された。この分子凝集は通常の低粘性溶液では観察されなかったことから、溶液の高粘性化により、溶質拡散が抑制されて局所的な高濃度状態が維持されやすくなったと考えられる。また、この時のキャビテーションの挙動を高速度カメラを用いて観察したところ、キャビテーション収縮後の再膨張及び崩壊が無くなり、崩壊時に発生する熱や高圧化などの核発生を阻害する要因が抑制されていることがわかった。以上の結果から、高粘性な溶液条件は核発生誘起に適している可能性が示唆された。
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Research Products
(5 results)