2009 Fiscal Year Annual Research Report
フェムト秒レーザー誘起タンパク質結晶核発生の原理解明と高度化
Project/Area Number |
08J55381
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
村井 良多 Osaka University, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | フェムト秒レーザー / 結晶化 / タンパク質 |
Research Abstract |
タンパク質の詳細な立体構造を解析する最も有効な手法は、結晶を利用したX線回折法であるが、タンパク質は分子間相互作用が小さいため核発生が困難であり、高品質結晶作製のボトルネックとなっている。そこで、申請者はフェムト秒レーザーを過飽和溶液に集光照射することにより強制的に核発生を誘起する技術の原理解明と高度化に取り組んだ。昨年度の研究より、レーザー照射時に発生するキャビテーションが分子を移動させ、局所的に分子の高濃度領域を形成し、核発生を促すことが明らかになった。本年は、高濃度領域の緩和時間を長くして核発生確率を高めるため、タンパク質溶液のゲル化を行った。タンパク質分子の拡散定数は、1 wt%のゲル中で0.5~0.8倍程度になることが報告されている。1 wt%のアガロースを添加して溶液をゲル化し、レーザー照射を行った結果、ニワトリ卵白リゾチームの結晶化において、通常の低粘性溶液の5分の1以下の低過飽和度条件下で核発生を誘起することに成功した。また、この時のキャビテーション挙動を観察した結果、ゲル中ではキャビテーションが崩壊しないことが明らかになった。キャビテーション崩壊時には、熱や圧力波の発生および化学反応などが誘起されることが知られており、これらの抑制も核発生促進に有効に働いたと考えられる。また、細胞増殖必須因子SATや膜タンパク質AcrBといった、実際に構造解析が求められている難結晶化タンパク質においても、溶液をゲル化することにより、より低過飽和度で核発生を誘起できることを明らかにした。さらに、アガロース添加による溶液のゲル化そのものが核発生を促進することを新たに見出した。以上の結果から、溶液のゲル化とフェムト秒レーザー照射の組み合わせは、タンパク質核発生促進に大きく貢献する技術であると考えられる。
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Research Products
(4 results)