2010 Fiscal Year Annual Research Report
アピコンプレックス原虫の細胞内増殖と宿主細胞操作に関する研究
Project/Area Number |
08J56011
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
林田 京子 北海道大学, 大学院・獣医学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | Theileria parva / Theileria annulata / MDM2-p53経路 / アポトーシス |
Research Abstract |
本研究はタイレリア原虫のリンパ球感染に伴う宿主細胞無限増殖機構の解明を目的とし、本年度はTheileria parvaおよび近縁種であるTheileria annulata原虫のリンパ球感染後のアポトーシス経路の変化を、MDM2-p53経路を中心に解析を行った。P53経路は本来腫瘍性増殖に反応して誘導され細胞周期静止もしくは細胞死を導く経路であり、タイレリア原虫がいかにこのp53経路を抑制しているのかを明らかにすることは、タイレリア原虫による宿主細胞無限増殖機構の解明および治療薬開発にとって必須の命題である。我々は前年度までに、p53を分解する分子であるMDM2に対する阻害薬(TIBL)がT.parva感染リンパ球の増殖を阻害し、細胞死を誘導すること、および感染細胞内においてMDM2蛋白の過剰発現や異常転写産物の転写が起こっていることを明らかにしてきた。本年度はこれら事象をより詳細に、特に他T.parva感染細胞株および近縁T.annulata原虫において同様の現象が観察されるか否か、またMDM2阻害薬添加時におけるp53分子動態を中心に解析を行った。その結果、他T.parva株およびT.annulataにおいても同様にMDM2の異常発現やMDM2阻害剤に対する感受性を示したが、その程度には株および種により差異があることを示した。また、DNA障害性の刺激を示したときのp53応答がこれら細胞株では正常に起こっていない事、しかしMDM2阻害剤添加によりp53応答が回復する事を示し、すなわちT.parva感染およびT.annulata感染細胞はMDM2の異常発現により正常な細胞死経路であるp53経路が抑制されており、このことがタイレリア感染細胞で見られる宿主細胞死抑制および無限増殖に密接に関与している可能性が強く示唆された。
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Research Products
(5 results)