2008 Fiscal Year Annual Research Report
高山植物群集のフェノロジー構造と送粉系を介した生物間相互作用の関係
Project/Area Number |
08J56031
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
川合 由加 Hokkaido University, 大学院・環境科学院, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 高山帯 / 生物間相互作用 / 植物の繁殖生態学 / 開花フェノロジー / マルハナバチ / 訪花 / 送粉 / 植物群集 |
Research Abstract |
本研究の目的は(1)高山植物群集のフェノロジー構造の定量化、(2)高山帯におけるマルハナバチの季節動態と採餌行動の解明、ならびに(3)送粉系を介した植物種間相互作用の実態の解明であった。上記の目的を果たすため、次の調査を北海道大雪山系の雪田植物群集で行った。(1)雪解け傾度に沿ったマルハナバチ媒植物の開花時期を調べて群集全体のフェノロジー構造を把握した。(2)(1)で用いた調査地を中心に雪解け傾度に沿ってプロットを設置し、開花期間を通して主要訪花昆虫(マルハナバチ)の行動(種名、カースト、訪花選好性、訪花頻度)を記録し、植物群集レベルと種レベルでの季節動態を明らかにした。(3)各プロットでの自然状態の結実率を計測し、繁殖成功の評価を行った。今年度は特に雪田植物群集に豊富にみられる、マルハナバチ媒草本植物4種に着目して調査を進めた。その結果、植物の繁殖成功は個体群内でも植物種で、同一種であっても個体群間で異なっていた。これは、マルハナバチの活性や行動様式が季節を通して劇的に変化することや、各植物種の生活史特性を反映した個体群内での種間の開花時期の違いに加えて、雪解け傾度が引き起こす植物個体群間での開花時期の違いが高山生態系での植物-植物や植物-昆虫といった生物間相互作用を自空間的に変化させているためだと考えられた。このような送粉系を巡る生物間相互作用の時空間変動を野外環境下で明らかにした研究はほとんど例がなく、また、季節変動に対する生物間相互作用の適応を知ることは、地球温暖化といった生物の季節性が変化した場合の生態系の影響予測にも大きく寄与する。
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