2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08J56061
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
山影 相 Tohoku University, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | 非調和フォノン / スクッテルダイト / パイロクロア / クラスレート化合物 / 自己無撞着調和近似 |
Research Abstract |
籠状構造を持ち、非調和性のある系の格子振動の分散関係、平均二乗変位および弾性定数の温度依存性を、計算が可能であるような簡単な模型(単位胞内に籠イオンとゲストイオンを一つずつ含む。ここで籠にゆるく束縛されているイオンをゲストイオンと呼ぶ)に対して、自己無撞着調和近似を用いて計算した。籠状構造に由来して、ブリルアン域境界上に広くに渡って平らな分散関係が存在する。以降、この振動をアインシュタイン振動と呼ぶ。 非調和性により、温度を下げるとともにアインシュタイン振動数が低下するが、これを定量的に計算するとともに、その漸近的な振る舞いを導出した。同様にして、弾性定数とイオンの平均二乗変位の温度依存性も導出した。また、格子振動の偏極ベクトルと振動数の温度依存性を調べることで、ゲストイオンの成分が主である基準振動に対して籠状構造における非調和性が大きな影響を与えることが分かった。しかし、籠イオンが主である基準振動も僅かながら温度依存性を示す。これは弾性定数の温度依存性を生む。平均二乗変位にも同様の振る舞いが現れる。つまり、非調和性により平均二乗変位の温度依存性は下に凸ではなく、上に凸になるが、この振る舞いはゲストイオンには強く表れる一方で、籠イオンにはほとんど現れないことが分かった。以上が模型から得られた結果である。これらと実験の結果を比較し議論した。PrOs4Sb12はアインシュタイン振動数が室温から10Kにかけて30%も低下する物質であるが、この温度依存性の形は本研究から得られるものと整合する。また、Sr8Ga16Ge30の超音波を用いて測定された弾性定数の温度依存性の形と、ラマン散乱から決定されたアインシュタイン振動数の関係は本研究の結果と定性的に一致している。
|
Research Products
(1 results)