2010 Fiscal Year Annual Research Report
不平等の受容と国不変信念:システム脅威と社会階層の影響
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08J56091
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
川嶋 伸佳 東北大学, 大学院・文学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 社会心理学 / 格差 / 不平等 / 公正感 / 社会調査 |
Research Abstract |
社会的格差は人々の心理的健康に悪影響を及ぼすことが知られているが、そのメカニズムは十分に解明されてこなかった。我々は、社会的不平等と心理的健康の関連を検討するために、公正感の多元性に注目した。公正感の多元性とは、公正判断の対象によって公正感が異なることであり、「私は社会において公正に扱われている」というミクロ公正感と、「社会は公正な場所である」いうマクロ公正感に分けられる。それぞれの公正感が、社会経済的地位や社会に対する知覚(社会がどのように運営されているか)に応じて変化すると同時に、心理的健康に異なる影響を与えると予想した。 2010年3月に行った2回の社会調査(郵送法、合計の対象者2400名、有効回答986名)を分析した結果、主に以下の4点が明らかとなった。(1)「日本社会は努力や頑張りに報いてくれる」という返報性信念の強い人は、ミクロ公正感・マクロ公正感ともに高い。(2)社会経済的地位が低い人のうち、「日本に住む限り、最低限の生活水準は守られる」という豊かさ信念の強い人は弱い人に比べて、マクロ公正感が高い。(3)社会経済的地位の高い人のうち、「日本社会は、貧しいものに救いの手を差し伸べてくれる」という優しさ信念が強い人は弱い人に比べて、マクロ公正感が高い。(4)社会経済的地位の低い人は高い人に比べて心理的健康状態が悪いが、この効果はミクロ公正感に媒介される。 社会経済的地位の低い人は、自らが不公正に扱われていると感じ、その感覚が心理的健康状態の悪化につながることが明らかとなった。ただし、公正感は社会がどのように運営されているかに関する個人の知覚によって高められる可能性が示された。不平等の弊害を低減するために、国がどのように社会を運営していくか、さらにそれをどのように国民に示してゆくかが重要である。
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Research Products
(5 results)