2008 Fiscal Year Annual Research Report
不平等の受容と国不変信念:システム脅威と社会階層の影響
Project/Area Number |
08J56091
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
川嶋 伸佳 Tohoku University, 大学院・文学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 社会心理学 / 格差 / 不平等 / 公正感 / 社会調査 |
Research Abstract |
格差問題に代表されるように、現代日本において社会的不平等に関する議論が高まっている。2008年度は、格差・不平等維持の心理学的メカニズムと社会経済的地位の関連について、(1)日本における体制正当化方略、(2)国不変信念と抗議行動の2つのテーマで研究した。(1)に関して、体制正当化とは、社会的不平等に対する主観的な正当化(ex.「人々は自分にふさわしい地位を得ている」「格差をもたらす競争は公正な手続に基づいている」といった認知)を指す。欧米の先行研究は、体制正当化は恵まれた人だけでなく、恵まれない入にも見られることを示してきた。しかし我々は、2005年と2008年に日本人を対象に実施した2つの社会調査を分析した結果、恵まれた人は恵まれない人よりも強く社会を正当化することを見出した。これは、欧米での知見と矛盾する。今後は、(a)日本(東アジア)独自の文化的価値観の影響、(b)理論自体の問題点、の2つの観点から、この矛盾の原因を解明する予定である。 一方で、全体としてみると日本人の社会的不公正感は高い。にもかかわらず、規範的な抗議行動(ex.投票行動、市民運動など)は低調である。(2)では、「日本の社会は本質的には変化しない」という国不変信念が、規範的な抗議行動を抑制するという予測を検討した。先述の2008年調査を分析した結果、国不変信念と規範的な抗議行動の間に予測された関連は見られなかった。一方で、社会的不公正感が高い人の中で、国不変信念の高い人は低い人に比べて、反規範的な抗議行動(ex.社会的ルールの無視、投票棄権)をより強く支持する傾向が見られた。この結果は、社会は変化しないという信念が、非合法な抗議行動を動機づける危険性を示唆している。今後は、国不変信念と抗議行動の関連性をより詳細に検討するとともに、国不変信念の形成メカニズムについて検証する予定である。
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Research Products
(2 results)