2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08J56121
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
小沼 邦重 Yamagata University, 大学院・医学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 炎症 / 発癌 / 浸出阻害 / 分子標的療法 |
Research Abstract |
遷延した炎症反応を背景とする発癌は炎症発癌と呼ばれる.その代表例は,ヘリコバクター・ピロリ菌感染による胃発癌や肝炎ウイルス感染による肝発癌などがある.この炎症発癌の予防もしくは治療の根幹は,炎症局所への炎症細胞浸出を阻害することにより達成されると考えた.そこで,炎症細胞の血管内皮細胞への接着・浸出を定量評価できる培養アッセイ系を作製した.この系を用いて,これまでに所属教室に保有するシグナル伝達,サイトカイン・増殖因子,プロスタノイド系,脂質・イオンチャンネル系,活性酸化窒素合成等を抑えることが知られている計282種類の化合物スクリーニングを施行した.その結果,濃度依存性を有し,かつ血管内皮細胞と炎症細胞のそれぞれに直接的な細胞傷害活性を持たない23種類の化合物を選択した.これらの中から接着・浸出活性の最も高い候補化合物をC57BL/6マウスに腹腔内投与すると,皮下に移入した異物のゼラチンスポンジ(10x5x3mm)内に浸出する炎症細胞数を顕著に抑制した.候補化合物の投与は,スポンジの腹腔内移入により惹起される腹腔浸出細胞数も抑制した.この候補化合物は,既に炎症を惹起させたマウスに投与しても炎症細胞浸出を抑制した.さらに,スポンジ誘発炎症細胞の存在下で非腫瘍原性の同系良性線維肉腫細胞の癌化が進展する炎症発癌モデルに候補化合物を投与すると発癌が抑制された.この候補化合物は,炎症細胞由来の活性酸素・活性窒素の生成には影響を与えなかった.候補化合物の投与を受けたマウスから炎症組織や臓器を摘出し,HPCL-質量分析を行った結果,投与候補化合物は炎症局所あるいは主要臓器に到達していることを確認した.今後は異なる炎症発癌モデルを導入し,得られた知見の普遍性を検証する予定である.
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Research Products
(8 results)