2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08J56181
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
橋本 健治 The University of Tokyo, 大学院・数理科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | K3曲面 / 周期写像 / 格子 / 自己同型群 / シンプレクティック作用 / 保型形式 |
Research Abstract |
5次対称群が作用するK3曲面の(ある)1次元族について調べた。まず、退化しているファイバーを求めた。その中の1つは、5次対称群による極大なシンプレクティック作用をもつ。既に知られている、K3曲面へのシンプレクティック作用についての理論をこの場合に応用して、この特殊なファイバーの超越格子を決定した。そして、族全体の対称性に注目して、他の退化ファイバー、及び一般のファイバーの超越格子を決定した。また、この計算の過程で、5次対称群がシンプレクティックに作用するK3曲面の分類、及びそのようなK3曲面の余不変格子の性質について研究した。 超越格子を決定したので、次に周期写像の逆写像を、周期領域上の保型形式を使って具体的に記述することを考えた。そのためには、一般のファイバーの超越格子の自己同型群について詳しく調べる必要がある。今の場合、超越格子のクリフォード代数の偶部分は4元数環になる。4元数環についての古典的な理論を応用することで、超越格子の自己同型群について調べた。尖点が存在しないことがわかるので、保型形式を得るために、モジュラー埋め込みを構成した。モジュラー埋め込みによるデータ定数の引き戻しは保型形式になる。具体的に周期逆写像を記述するために、こうして得られた保型形式の間の関係を求めた。求めた関係を使い、周期逆写像を具体的に記述することができた。 K3曲面の性質は大域的トレリ型定理により理論的には概ね理解できるが、その1つの応用として以上の具体的な結果を得た。また、上記の場合、余不変格子は負定値となる。負定値の格子の性質の研究は一般には難しいが、K3曲面の幾何との関係から上記の場合の格子の性質は理解が可能になる。以上の結果の系として、ある志村曲線の定義方程式を決定した。
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