Research Abstract |
本研究の目的は,環境作用と高サイクル荷重を同時にうける鉄道橋・道路橋床版の疲労損傷メカニズムを明らかにし,その技術を用いてコンクリート構造物の寿命を定量的に評価する手法を開発することである. 実構造物で想定される乾燥収縮ひび割れと,ひび割れへの雨水の浸透を想定し,東日本旅客鉄道株式会社と共同で,実大スラブの疲労実験を行った.水セメント比69%の普通コンクリートで1200x2200x140mmのスラブ供試体を6体打設し,不十分な養生と外部拘束により,乾燥収縮ひびわれを導入し,乾燥状態と床版上面に水を張った状態で,静的および定点繰返しを実施した。非線形有限要素解析では,コンクリート要素に実際に測定されたひずみを初期ひずみとして与えることで乾燥収縮によるひびわれの発生を再現し,実験と同様の押し抜きせん断破壊を再現することができた,試験体No.2では,初期載荷1万回で損傷を導入した後に,上面増厚補強として要素を追加したモデルにより再載荷解析を実施した.本研究は,損傷を受けた構造物の残存寿命予測と補強効果の判定の実現に寄与するものである. 鋼コンクリート合成床版の摩擦機構に着目した実験および数値解析も実施した.非線形有限要素解析プログラムにおいて,鋼材とコンクリート要素の境界に固有の特性を仮想要素でモデル化し,摩擦条件の違いによるコンクリート内部のひび割れと破壊モードを予測した後,新日鐵エンジニアリング株式会社の協力を得て1500x1500x169mmのスラブを8体作成し,30万回を越える高サイクル疲労載荷と静的載荷を実施した.この結果,合成床版の構造特性には,鋼コンクリート境界面の摩擦特性だけでなく初期付着力が大きく影響すること,初期付着喪失後は,摩擦特性によって破壊形態が変化することが確認された.本研究は,複合構造物の維持管理および寿命予測に寄与するものである.
|