2008 Fiscal Year Annual Research Report
三角格子反強磁性体における磁気特性と誘電特性の相関に関する研究
Project/Area Number |
08J56431
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
木村 健太 Osaka University, 基礎工学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | 電気磁気効果 / 三角格子反強磁性体 / マルチフェロイクス |
Research Abstract |
本年度は、三角格子反強磁性体CuCrO_2の電気磁気相関解明に注力した。CuCrO_2は基底磁気構造として面直120度スピン構造を示す。最近、この120度構造相への磁気転移に伴う強誘電性発現が発見され電気磁気相関に興味が持たれているが、単結晶育成が困難なため詳細は不明である。本申請者はCuCrO_2単結晶育成に成功し、その電気磁気相関を詳細に調べた。その結果、120度構造相への転移に伴い三角格子面内方向に電気分極が発生することを突き止めた。更に、磁場印加により分極値が大きく変化することを発見し、この現象を磁場によるドメイン構造の整列というモデルで合理的に説明した。この研究成果はPhysical Review Bに掲載された。 次に、120度構造に特徴的な磁気的パラメーター「カイラリティ」と電気分極との相関を偏極中性子回折により調べた。その結果、電場印加による分極反転に伴いカイラリティの符号が反転することを観察した。これは、面直120度構造におけるカイラリティの検出・制御に強誘電特性の利用が有効であることを示す重要な実験結果である。 さらに、CuCrO_2の強誘電特性をPE履歴曲線測定から詳細に調べ、一般的な磁気秩序誘起型の強誘電体(TbMnO3など)に比べて極めて小さな抗電場を持つことを明らかにした。さらに、この抗電場が高い外部磁場敏感性を示すことを発見し、これを利用して電場磁場双方による分極反転制御に成功した。現在、この結果をまとめた論文を投稿中である。 上記と平行して、CuCrO_2と同様に面直120度構造を示す三角格子反強磁性体CsNiCl_3の電気磁気相関について調べたがヽ相関は見られなかった。CuCrO_2では磁気構造が極性となるのに対しCsNiCl_3では非極性となることから、この結果は、磁気構造による反転対称性の破れが電気磁気相関発現に最も本質的であることを示す点で重要である。
|