2009 Fiscal Year Annual Research Report
大脳前頭連合野における仮想上の動作プランが認知と運動の統合過程に果たす役割
Project/Area Number |
08J56651
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Research Institution | Tamagawa University |
Principal Investigator |
山形 朋子 Tamagawa University, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 視覚運動変換 / 前頭連合野 / 運動前野 / 到達運動 / 電気生理学 / 認知 / 運動制御 |
Research Abstract |
当該年度は,仮想上の動作プランを形成することが必要な運動と,一方で見えている物に手を伸ばすという直接的な運動の違いに着目し,2つの認知-運動統合過程において,前頭前野と運動前野を中心とする前頭連合野がどのように関与するかを調べた.2つの過程はそれぞれ「抽象的動作」と「視覚空間」の視覚情報を用いることで検証した. 被検体に「抽象的動作」と「視覚空間」を表す視覚指示に基づいた到達運動課題を行わせ,被検体の運動前野から神経細胞活動を記録して視覚指示への応答を調べた.運動前野の神経細胞は「視覚空間」の指示によく応答した.一方で「抽象的動作」の指示には運動前野背側部(PMd)がよく応答した.「視覚空間」情報は90ミリ秒でPMdと運動前野腹側部(PMv)に到達したが,「抽象的動作」は150ミリ秒でPMdに到達した.また,運動前野は記録半球とは対側の「視覚空間情報」に強く応答する傾向があったが,「抽象的動作」の指示内容である「左右」には,左(対側)指示や右(同側)指示への優先的な応答傾向はなかった.これらの結果により,運動前野は「視覚空間」と「抽象的動作」の情報を異なる経路から受け取ることが示唆された.また,PMdとPMvが空間情報に基づく直接的な運動に,PMdが抽象的動作に基づいて仮想上の動作プラン形成を介した運動に主要な役割を果たすことが示唆された.この成果は欧文専門誌Journal of Neurophysiology誌に筆頭著者として発表した. 前頭前野については仮想上の動作プラン形成においてモニタリング機能を果たすことが明らかになりつつあり,その成果は当該年度において国内外の学会で発表した.また,前頭前野と運動前野の比較により2領域の並列した情報処理様式が示されつつあり,本研究を通して,認知と運動の統合過程における情報処理機構に関して機能的な示唆を提供することができた.
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