Research Abstract |
本研究では,京都市東山山麓の重要文化財後背斜面を対象に,避難や規制の実施から解除までを具体的に評価するための防災システムを「統計的手法,数値力学的手法」を使って構築することを目指す。特に,避難勧告の指示の基準をより具体的に設定するため,降雨後の地盤内水分の変動および蒸発量に注目する。蒸発量の測定には,ラインメータなどの計測機器が販売されているが,現地への設置やメンテナンスの容易さを考慮して,風速,湿度,気温などの一般的な気象データを使って蒸発量を求めることを目指す。その蒸発量は,数値シミュレーションの境界条件(降雨時:降雨量,降雨後:蒸発量)とすることで,避難や規制の実施から解除までをより具体的に設定できるものと思われる。本研究では,1)統計的手法を用いた危険度評価,2)人工降雨装置による室内土槽試験結果と数値シミュレーション結果の比較・検討,3)蒸発量の算定を本年度の研究計画とし,各項目の研究実績を示す。 今年度は主に1)と3)を中心に研究を進めてきた。1)は,現地斜面で計測しているデータ(間隙水圧,雨量,地表面変位)を用いて崩壊危険度を評価している。同様に,室内土槽試験を対象とした場合の崩壊危険度評価も試みている。2)は,バルク式をベースとした推定方法の妥当性を検討するため,室内および屋外で蒸発実験を実施した。その結果,実験結果と計算結果はある程度の精度で蒸発量を推定できることが確認できた。しかし,今年度は実験ケースも限られたため,来年度も継続して実験を進める。3)は,現在プログラムを作成中であり,来年度も継続して研究を進め,実験結果と計算結果を比較検討する予定である。
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