1998 Fiscal Year Annual Research Report
シベリア湿原における大気環境汚染調査と環境影響の評価
Project/Area Number |
09041120
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
太田 幸雄 北海道大学, 大学院・工学研究科, 教授 (00100058)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
ラステガエフ I ロシア工学アカデミー, シベリア支部, 支部長
シシキン Y ヤクーツク永久凍土研究所, 研究員
マカロフ V ヤクーツク永久凍土研究所, 部長
深沢 達矢 北海道大学, 大学院・工学研究科, 助手 (80292051)
村尾 直人 北海道大学, 大学院・工学研究科, 助教授 (00190869)
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Keywords | シベリア湿原 / 大気環境汚染 / ノリリスク / 銅・ニッケル精錬 / シベリアカラマツ / コケ / 土壌 / 重金属汚染成分 |
Research Abstract |
今年度は特に、エニセイ川下流に位置する銅・ニッケルの採鉱・精錬鉱業都市ノリリスクの周辺10地点において、シベリアカラマツの針状葉と、コケ、および深さ約30cmまでの凍土土壌を採取し、北大まで持ち帰った。これらの試料を風乾し、ボールミルで破砕した後、酸性成分については蒸留水抽出後イオンクロマトグラフ法により分析し、重金属成分については粉砕試料を硝酸およびフッ酸の混酸で分解した後、ICP質量分析計により分析した。これまでの分析結果では、まずカラマツ針状葉中の銅、ニッケル、鉛、コバルトの濃度は、ノリリスク市街に近いほど高く、遠方に行くに従って減少しており、カラマツの針状葉中の汚染物質濃度がその地点の大気汚染状況をかなり良く反映していることが分かった。次にコケおよび土壌中の各種金属成分濃度についての相関を調べたところ、ニッケル、コバルト、銅、鉛の間の相関が良く、これらは鉱業起源と考えられ、また、テルル、ヒ素、セレン、カドミウムの間でも相関が良く、これらは石炭燃焼起源と考えられる。コケおよび表層土壌中のこれらの元素濃度はノリリスク市街部に近いほど高い。なお、深さ30cmでの土壌中のこれらの濃度は地点によってそれほど変化していないこと、およびケイ素とこれらの金属成分との比の値が地球上における平均値とほぼ等しいことから、深さ30cmでのこれらの金属成分の濃度が、採鉱・精錬業が開始される以前のこの地域のバックグラウンド値と考えて良い。これらの結果を基に、表層土壌と深さ30cmにおける土壌とに含まれる汚染金属成分濃度について比較し検討したところ、過去35年間の鉱業活動によって、ノリリスク周辺の表層土壌中にはニッケル、銅、鉛等の重金属汚染成分が数百倍の高濃度で濃縮蓄積されていることが分かった。
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