1997 Fiscal Year Annual Research Report
日本型宗教の発生・展開の過程、およびその構造についての歴史学的研究
Project/Area Number |
09208207
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Research Institution | Kyoto University of Education |
Principal Investigator |
西山 克 京都教育大学, 教育学部, 教授 (30145825)
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Keywords | 神仏習合 / 八幡宮(神) / 宮寺 / 始祖 / 神霊 / 怪異現象 / 鳴動 / 応神天皇 |
Research Abstract |
八世紀なかばに、東大寺大仏の建立にあわせて八幡神が九州から畿内に進出したことが、以後の列島に展開する神仏習合の歴史にとって、決定的に重要であったのは言うまでもない。仏法を守護し、みずから仏法に帰依する護法善神的な神々の姿がここから見えてくる。以後、たとえば天照大神を大日如来の垂迹とみるような、本地仏一垂迹神の序列的な関係の枠組みのなかで神仏の交渉を捉える見方が、地域を問わずに展開することになる。 しかしさらに注意が必要なのは、問題の八幡神が天皇家の始祖の一人である応神天皇の神霊とみなされ、それが仏家によって管理される「宮寺」の体制が形づくられていたことである。宇佐八幡宮においても、石清水八幡宮においても事情は同じである。ある氏族の始祖とみなされる英雄の神霊を仏家が管理する「宮寺」の体制は八幡神以外にも類例がある。摂関家の始祖である藤原鎌足を祀る多武峰寺(現談山神社)、清和源氏の始祖である多田満仲を祀る多田院(現多田神社)、徳川将軍家の始祖である徳川家康を祀る日光廟(現日光東照宮)など。始祖の神霊は、御廟・墓・山の鳴動などの怪異現象を通じて子孫に警告を発するような、人智を越えた超常的なパワーを持つものとみなされていた。 日本列島において展開した神仏習合という現象を考える際に、英雄の神霊を仏家が管理する「宮寺」の体制は、形式的な本地仏一垂迹神の序列よりも一層研究に値する。東北アジアに通底する民俗的な観念・意識(祖霊・降霊・憑霊)による裏付けに支えられているように思えるからである。こうした諸点を、主に宇佐・石清水八幡宮と談山神社関係の資史料により検討した。また日光東照宮についても、検討を準備中である。
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