1997 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09226232
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Research Institution | Ohu University |
Principal Investigator |
菊地 尚志 奥羽大学, 歯学部, 助教授 (20211873)
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Keywords | 谷線法 / インスタントン / 経路積分 / バレーインスタントン / トンネル効果 / 摂動級数 / 二重井戸 / 非摂動論的寄与 |
Research Abstract |
1.虚時間形式の経路積分によって量子化された物理系の物理量を半古典近似により評価する際、取り込める配位はインスタントンやバウンスと呼ばれる、配位空間全体にくらべればほんの一握りの古典解だけである。このため、特にバウンス解を基に近似した場合、原理的な問題が生じる。それのまわりの揺らぎで負の固有値を持つものがあり、この方向の経路積分が定義されないことである。スカラー場の理論などでは、このバウンス解の寄与をエネルギーの虚部、すなわち崩壊率と解釈してきたが、エネルギーが実以上にはなりえない量子力学の場合、この解釈は成り立たない。我々はこの計算上の問題が固有谷線法によって解決できることを示した。バウンスだけが唯一の古典解であるような場合でも、固有谷線法で求められるバレーインスタントンと名付けられた配位を計算に取り入れ、実のエネルギー固有値を得ることができる。 2.固有谷線法は摂動論を補強する上でも重要である。物理量の摂動級数は収束しないことが知られている。よって、摂動論が予言能力を持つためには、発散級数の和法も含めて定義されなければならない。ボレル和の方法はこのような和法のひとつであるが、それでも、対称二重井戸の様なトンネル効果を含む模型では一意的な答えを与えない。トンネル効果の非摂動論的な効果を取り入れることがこの摂動論の不定性を回避する方法であるという指摘がなされていたが、我々は固有谷線法に基づく計算こそがこの論点に明確に答えを与えることを示した。固有谷線法では、真空からバウンスを経由してさらにバレーインスタントン対にいたる一連の配位の集合を経路積分の中に取り入れることができる。結果として、摂動計算では取り入れることのできないトンネル効果の寄与を摂動論的な寄与と同時に含む計算が可能であり、結果としてボレル和の不定性をなくすことができる。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] H.Aoyama: "Recent Development of the Theory of Tunneling" Progress of Theoretical Physics,Supplement. 127. 1-92 (1997)
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[Publications] H.Aoyama: "Fake Instability in the Euclidean Formalism of Quantum Tunneling" Physical Review Letters. 79. 4052-4055 (1997)
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[Publications] H.Aoyama: "Valleys in Quantum Mechanics" Physics Letters. (印刷中.