1997 Fiscal Year Annual Research Report
ヒトがん細胞におけるMAPキナーゼカスケードの異常-細胞がん化との相関
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09254253
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
河野 通明 長崎大学, 薬学部, 教授 (00027335)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大高 章 京都大学, 大学院・薬学研究科, 助教授 (20201973)
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Keywords | 細胞がん化 / ヒトがん細胞 / MAPキナーゼ / MAPキナーゼ・キナーゼ / MEK阻害剤 / 増殖阻害 / アポトーシス / pp125^<FAK> |
Research Abstract |
1.MAPキナーゼの恒常的活性化が認められた全ての癌細胞においては同時にMAPキナーゼ・キナーゼ(MEK)の活性化が起こっており、その90%においてはさらにRaf-1の活性化も認められるが、一方、MAPキナーゼ活性化とras遺伝子変異との間には50%程度の相関しか認められないことを明らかにした。すなわち、(i)各癌細胞におけるMAPキナーゼ恒常的活性化の原因はMAPキナーゼ自身の異常ではなく、またMEKの異常がその原因となっている可能性も低いこと、(ii)その原因の大部分はRasの上流に位置する何らかのシグナル分子(増殖因子受容体、GRB2、Sosなど)の機能異常にある可能性、が示唆された。 2.血清で増殖刺激しても全くMAPキナーゼが活性化されない癌細胞は共通してインテグリン/p125^<FAK>系の機能低下(β1インテグリンなどの発現レベルが低い、p125^<FAK>のチロシンリン酸化が認められない)、および器壁への接着性が低いという特徴を有し、一方、MAPキナーゼが恒常的に活性化されている癌細胞においては逆にインテグリン/p125^<FAK>系の機能亢進、器壁への高接着性を認めた。すなわち、MAPキナーゼ系が癌細胞の細胞接着性、さらに基底膜/間質への浸潤性及び転移能の制御に関与している可能性が示唆された。 3.MEK阻害剤(AMPC)を利用して各細胞のMAPキナーゼ系を特異的に遮断したところ、MAPキナーゼに顕著な恒常的活性化が認められた癌細胞の周期動態には著しい影響が認められ(G1期への集積)、ほぼ完全な増殖停止、さらにアポトーシス様の細胞死も誘導された。一方、ヒト二倍体繊維芽細胞、MAPキナーゼに恒常的活性化が認められない癌細胞に対しては、AMPCは上述のような影響を示さなかった。すなわち、MAPキナーゼ活性が顕著に上昇している癌細胞に対しては、MAPキナーゼ系を特異的遮断する薬剤が実際に制癌効果を示す可能性が示唆された。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] Sakakura,C.: "Inhibition of MAP kinase by sphingosine and its methylated derivative, N, Ndimethylsphingosine:A correlation with induction of apoptosis in solid tumor cells." Int.J.Oncol.11巻. 31-39 (1997)
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[Publications] Tanimura,S.: "Activation of the 41-/43-kDa mitogen-activated protein kinase signaling pathway is required for hepatocyte growth factor-induced cell scattering." ONCOGENE. 17巻(印刷中). (1998)
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[Publications] Hashimoto,H.: "Evidence for existence of ERK1 and ERK2 in carp." J.Biochem.123巻(印刷中). (1998)
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[Publications] 服部 明: "腫瘍壊死因子(TNFα)-TNFαは繊維芽細胞のNGF産生能を顕著に促進する-" 現代医療. 29巻. 1187-1193 (1997)
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[Publications] 河野通明: "HGFの細胞内シグナル伝達" 実験医学. 15巻. 1033-1039 (1997)