1999 Fiscal Year Annual Research Report
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09304054
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
河村 公隆 北海道大学, 低温科学研究所, 教授 (70201449)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡辺 興亜 国立極地研究所, 教授 (60111861)
中塚 武 北海道大学, 低温科学研究所, 助教授 (60242880)
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Keywords | 南極アイスコア / 有機物 / 脂質 / 脂肪酸 / オゾンホール / 海洋生物 / 地球温暖化 / 大気酸化能力 |
Research Abstract |
本年度は、南極H15アイスコア中の脂質成分の分析結果から、過去350年間の大気環境の情報を得ることを目的に、アイスコアの脂質分析を行うとともに、南極の降雪試料についても分析を行った。アイスコア試料は、南極H15地点において1991年に掘削、採取されたものを用いた。高分解能GC及びGC/MSを用いることにより、アイスコア中にn-アルカン及びUCM炭化水素、PAH、n-アルコール、モノカルボン酸、ジカルボン酸、オキソ酸を検出し、その深度分析を明らかにした。 アイスコア中にUCM炭化水素やPAHを検出したことにより、人為起源物質が南極氷床まで大気輸送され、保存されていることが明らかとなった。これらの濃度は1900年代以降増加しており、この傾向はグリーンランドアイスコアの結果と一致した。このことから、1900年代以降、全球的に大気中の人為起源物質が増加したことが示唆された。また、n-アルコール及び直鎖飽和モノカルボン酸の分布から、陸上に比べ海洋からの寄与が相対的に大きいことが明らかとなった。しかし、陸上及び海洋からの寄与は過去350年間において一定ではなく、1850年代以降、陸上からの寄与が増加する傾向が認められた。また、低分子モノカルボン酸の濃度は、比較的寒冷な小氷期に低く、温暖化とともに増加する傾向を示した。これらの結果より、アイスコア中の海洋起源有機物は、南大洋の海氷の拡大・縮小と、それに伴う海洋から大気への有機物フラックスの変動を反映することが示唆された。不飽和モノカルボン酸や低分子ジカルボン酸の組成比から見た大気の酸化能力は、過去350年間において大きく変動した。アゼライン酸とその前駆体である不飽和モノカルボン酸の濃度比は、1970年代以降急激に増加しており、南極における対流圏の光化学的酸化能力が、1970年代以降、成層圏オゾン濃度の現象に対応して増大している可能性が示唆された。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] K. Kawamura: "Implication of azelaic acid in a Greenland ice core for oceanic and atmospheric change in high latitudes"Geophysical Research Letter. 26. 871-874 (1999)
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[Publications] S. Matsunaga: "Seasonal changes of low molecular weight dicarboxylic acids in snow samples from Dome-Fuji, Antarctica"Polar Meteorology and Glaciology. 13. 53-63 (1999)
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[Publications] O. Watanabe: "Basic analyses of Dome Fuji deep ice core. Part 1 : Stable oxygen and hydrogen isotope ratios, major chemical compositions and dust concentration"Polar Meteorology and Glaciology. 13. 83-89 (1999)
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[Publications] M. Ikehara: "Organic geochemistry of greenish clay and organic-rich sediments since the early Miocene from Hole 985A, Norway Basin"Proceedings of the Ocean Drilling Program, Scientific Results. 162. 209-216 (1999)
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[Publications] N. Ohkouchi: "Distributions of three- to seven-ring polynuclear aromatic hydrocarbons on the deep sea floor in the Central Pacific"Envionmental Science & Technology. 33. 3086-3090 (1999)
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[Publications] 今井 美江: "同時採取した降水およびエアロゾル中の低分子ジカルボン酸・ケトカルボン酸・ジカルボニルの分布と経時変化"地球化学. (印刷中). (2000)