2000 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09304054
|
Research Institution | HOKKAIDO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
河村 公隆 北海道大学, 低温科学研究所, 教授 (70201449)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡辺 興亜 国立極地研究所, 教授 (60111861)
中塚 武 北海道大学, 低温科学研究所, 助教授 (60242880)
|
Keywords | 南極アイスコア / 有機物 / 低分子ジカルボン酸 / 脂肪酸 / 炭化水素 / 大気輸送 / 大気環境変化 / 微量分析 |
Research Abstract |
本年度は、有機物濃度の極めて低いと考えられる深層氷床コアを対象とした微量有機物分析法を開発し、この方法を南極の内陸で採取した南やまとコアに適用した。この研究により、低分子ジカルボン酸、脂肪酸、脂肪族炭化水素の検出限界を従来の方法に比べそれぞれ数十分の一以下にまで下げることに成功した。その結果、南極内陸での深層氷床コア(南やまと氷床コア)中の有機物の分布を初めて明らかにすることができた。南やまと氷床コア中の有機物濃度は、低分子ジカルボン酸、脂肪酸、脂肪族炭化水素酸でそれぞれ平均79ng/kg、75ng/kg、3.1ng/kgであることがわかった。この濃度は、昨年までの分析した南極沿岸域のH15浅層コア中の有機物濃度と比較するとそれぞれ1/15、1/8、1/14という極めて低い値であった。この結果は、内陸に行くに従って、有機物濃度はかなり減少していることを意味している。一方、南極ドリフト雪試料中のこれら化合物の平均濃度と比較してもそれぞれ1/14、1/4、1/3であった。現在の内陸における雪の中の有機物濃度は、過去に比べて高くなっていることが示唆された。アイスコア中の脂肪族炭化水素の組成を詳細に検討した結果、アルカンの平均炭素鎖(ACL値:陸上高等植物が生息している温度と良い相関がある)が大きい時期には、氷床中のδD値も高い傾向(すなわち、暖かい時代に相当する)が見られた。このことから脂肪族炭化水素のACL値が過去の大気環境変化と大気輸送の変化のトレーサーとして使える可能性が示唆された。
|
Research Products
(6 results)
-
[Publications] K.kawamura: "Distributions of low molecular weight dicarboxylic acids, oxocarboxylic acids and α-dicarbonyls in Greenland ice core : A trend from Little Ice Age to the present (1540 to 1989 A.D.). "Journal of Geophysical Research. 106. 1331-1345 (2001)
-
[Publications] 河村公隆: "東京、福島県田島、札幌における降雪試料中の低分子ジカルボン酸類の分布と全有機態炭素"雪氷. 62. 225-253 (2000)
-
[Publications] 今井美江: "同時採取した降水およびエアロゾル中の低分子ジカルボン酸・ケトカルボン酸・ジカルボニルの分布と経時変化"地球化学. 34. 111-123 (2000)
-
[Publications] 河村公隆: "有機分子から得られる大気環境の変化、人間活動および大気化学過程の情報-氷床コアの解析"月刊海洋. 32. 590-597 (2000)
-
[Publications] T.Saito: "Distributions of C_2-C_6 hydrocarbons over the western North Pacific and eastern Indian Ocean ."Atmospheric Environment. 34. 4373-4381 (2000)
-
[Publications] S.Matsunaga: "Determination of α-and β-hydroxycarbonyls and dicarbonyls in snow and rain samples by GC/FID and GC/MS employing benzyl hydroxyl oxime derivatization. "Analytical Chemistry. 72. 4742-4746 (2000)