1997 Fiscal Year Annual Research Report
迅速溶液X線回折法と分光光度法による亜・超臨界状態のイオンと蛋白質の溶媒和構造
Project/Area Number |
09304064
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (A)
|
Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
大瀧 仁志 立命館大学, 理工学部, 教授 (80022549)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加藤 稔 立命館大学, 理工学部, 講師 (00241258)
小堤 和彦 立命館大学, 理工学部, 助教授 (50177250)
澤村 精治 立命館大学, 理工学部, 助教授 (10167439)
谷口 吉弘 立命館大学, 理工学部, 教授 (70066702)
|
Keywords | 超臨界状態の水 / 溶液X線回折 / イオンの溶媒和 / 蛋白質の構造 / ラマン分光法 / 赤外分光法 / 溶解度 / 高温・高圧 |
Research Abstract |
本研究は、高温・高圧下、特に超臨界状態における溶液中でのイオンおよび蛋白質と溶媒分子との相互作用の挙動に関して溶液X線回折報ならびにラマンおよび赤外分光光度法を用いて研究し、さらに各種電解質の溶解度に及ぼす温度ならびに圧力の効果を検討し、イオンと溶媒との相互作用を解明することを目的として計画されたものである。 高温・高圧下、特に超臨界状態における溶液X線回折法には従来はSSDやPSPCなどの検出器が用いられたが、測定に長時間(約50時間あるいはそれ以上)を要することから、しばしば実験上さまざまな困難があった。近年イメージング・プレート(IP)を用いた検出器が開発され、測定時間は1-2時間程度に大幅に短縮されたが、IPではX線を検出したあと計測装置まで検出器(フィルム)を移動させなければならない欠点がある。本研究計画では、ごく最近開発されたCCD(Charge Coupled Device)を溶液X線回折装置に装備することにより、検出器により検知されたX線強度がそのまま(on-time)計測することが可能となった。これにより、測定時間の大幅な短縮と検出から計測までの時間差(time-lag)をなくすことができ、測定精度を一層向上させることができる。CCDを装備した溶液X線回折装置の作成は世界で初めてである。 本年度はCCDを設置すべき高温・高圧溶液X線回折装置を建設し、それに高温・高圧セルを設置し、従来用いてきたPSPC検出器により、装置の性能を検討するとともに、CCDの利用におけるプログラムを完成させることとした。また購入した分光光度計を用いて水-テトラメチル尿素混合溶液中のコバルト(II)イオンの選択溶媒和について検討を行った。 蛋白質と溶媒との相互作用に関しては、30℃、0.1-335MPaの領域においてクジラミオグロビン(Mb)の二次構造の圧力依存性をラマン分光法により研究した。Mbは圧力を増加させると加熱により分子間ベータシートの形成をともないながらランダムコイルへと不可逆的に転移し、一方、低温ではMbの二次構造はランダムコイルへと可逆的に変化することが認められた。 KCl水溶液は100-200MPaまでは圧力とともに粘性率のB-係数(Jones-DoleのB係数)が増大するが、その後は極大値を経て減少することが認められた。この現象は溶媒としての水とイオンとの相互作用を誘電摩擦の観点から説明することが出来た。粘度のB-係数が圧力とともに増大する現象は隙間の多い水構造が圧力によって密な分子配列に変化したためであると理解することができる。この説明は低温ほどB-係数の増加率が大きいことからも支持される。
|
Research Products
(13 results)
-
[Publications] H.Ohtaki, T.Radnai, T.Yamaguchi: "Structure of Water under Subcritical and Supercritical Conditions Studied by Solution X-Ray Diffraction" Chem.Soc.Rev.No.1. 41-51 (1997)
-
[Publications] M.Nakahara, T.Ya,aguchi, H.Ohtaki: "The Structure of Water and Aqueous Electrolyte Solutions under Extreme Conditions" Recent Res.Deveol.in Phys.Chem.1. 17-49 (1997)
-
[Publications] K.Ozutsumi, A.Kitakaze, M.Iinomi, H.Ohtaki: "Structural Studies on Preferential Solvation of Silver(I)ion by Acetonitrile over N,N-Dimethylformamide in Their Mixtures." J.Mol.Liq.73/74. 385-396 (1997)
-
[Publications] Fernando Rull, H.Ohtaki: "Raman Spectral Studies on Ionic Interaction in Aqueous Alkali Sulfate Solution" Spectrochim.Acta. A53. 643-653 (1997)
-
[Publications] S.Patnaik, K.Muruganandam, M.Seshasayee, H.Ohtaki: "X-Ray Diffraction Studies on AgI-Ag_2O-V_2O_5 Glasses" Solid State Ionics. 96. 119-122 (1997)
-
[Publications] 大瀧仁志、小堤和彦: "ストップド・フロー-EXAFS法による短寿命反応中間体の構造決定" 立命館大学理工学研究所紀要. 56(印刷中). (1997)
-
[Publications] 大瀧仁志: "抽出の溶液論" 抽出技術集覧. 1-8 (1997)
-
[Publications] 大瀧仁志: "溶液中のイオンのふるまい" 化学と教育. 45. 646-650 (1997)
-
[Publications] N.Takeda, K.Nakano, M.Kato, Y.Taniguchi.: "Pressure-Induced Structural Rearrangements of Bovine Pancreatic Trypsin Inhibitor Studied by FTIR Spectroscopy" Biospectroscopy. 4(印刷中). (1998)
-
[Publications] T.Matsumoto, S.Makimoto, Y.Taniguchi: "Effect of Pressure on the Mechanism of Hydrolysis of Maltoteraose,Maltopentaose,and Maltohexose Catalyzed by Porcine Pancreatic α-Amylase" Biochem.Biophys.Acta. 1343. 243-250 (1997)
-
[Publications] T.Matsumoto, S.Makimoto, Y.Taniguchi: "Effect of Pressure on the Mechanism of Hydrolysis of Meltoheptaose and Amylose Catalyzed by Porcine Pancreatic α-Amylase" J.Agricul.Food Chem.45. 3431-3436 (1997)
-
[Publications] T.Nakai, S.Sawamura, Y.Taniguchi, T.Kuboyama: "Effect of Pressure and Temperature on the Viscosity B Coefficient for Potassium Chloride in Water" Material Sci.Res.Internatl.3. 204-209 (1997)
-
[Publications] 大瀧仁志 編: "Crystallization Processes" John Wiley & Sons Ltd., 208 (1998)