1999 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09420014
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山影 進 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (10115959)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
白石 隆 京都大学, 東南アジア研究センター, 教授 (40092241)
黒柳 米司 大東文化大学, 法学部, 教授 (00186553)
山本 吉宣 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (20092025)
小笠原 高雪 山梨学院大学, 法学部, 助教授 (50247467)
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Keywords | ASEAN / アジア太平洋 / 地域主義 |
Research Abstract |
1997年に始まった本研究は、ASEANの広域地域秩序形成能力を検証することを目的にしていた。折しも、初年度の7月に始まったタイの通貨危機は、たちまちマレーシアやインドネシアに伝播し、さらには韓国やラテンアメリカ、ロシアにまでも飛び火して21世紀型危機と騒がれた。その原因についてはさまざまに論議されているが、危機に組織として有効に対処できなかったASEANに対する評価は大きく下がった。そのような環境で、本研究は徒にASEANの能力を低く評価するのではなく、冷静にASEAN諸国の反応、そしてASEANとしての対応を分析してきた。その結果、ASEAN諸国は危機に見舞われても、ASEAN協力を減速させなかったことが明らかになった。白石のインドネシア分析によれば、政治構造の大変革期にあっても、近隣諸国との関係は国内政治争点にはならなかった。ただし、本研究では十分に触れられなかったが、マレーシアとシンガポールの関係悪化は危機と関連している可能性が高い。そしてASEANの広域秩序形成は、第1にASEANの東南アジア全域への拡大、第2に既存広域制度への働きかけ、第3に大国関係への関与、第4に新たな広域制度構築の模索に分けて考えると理解が深まることが明らかになった。小笠原は特に第1の視点から分析し、山本は第2の視点、山影は第3の視点、黒柳は第4の視点から分析を深めた。ASEANはたしかに今回の危機のような事態に対処できるような機能を備えていなかったが、ASEAN自身の統合への取り組みの再確認や域外大国や広域組織への働きかけを通じて、結果的にASEAN諸国にとっての対応能力は高まったと結論づけられた。3年間の共同研究は、想定外の事態のために、当初予定していた構想とは分析事例が異なってしまったが、理論的にはASEANの理解を一層深めることができた。
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[Publications] 山影 進: "ASEAN10の課題と内政不干渉原則の動揺"国際問題. 472. 2-16 (1999)
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[Publications] 山影 進: "ASEANの国際関係"現代アジア危機からの再生. 217-238 (1999)
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[Publications] 山影 進: "不戦共同体の形成とASEANの経験"世界歴史. 27. 259-276 (2000)
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[Publications] 小笠原 高雪: "アメリカの東南アジア政策"現代アメリカ外交の転換過程. 181-206 (1999)
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[Publications] 小笠原 高雪: "ASEAN拡大の政治的意味"国際問題. 472. 44-57 (1999)
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[Publications] 白石 隆: "崩壊インドネシアはどこへ行く"NTT出版. 174 (1999)