1999 Fiscal Year Annual Research Report
山東省煙台地域における経済の市場化と地域産業の変容に関する研究
Project/Area Number |
09430004
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
平野 厚生 東北大学, 大学院・国際文化研究科, 教授 (60008761)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
増田 聡 東北大学, 大学院・国際文化研究科, 助教授 (30231591)
長谷部 弘 東北大学, 大学院・国際文化研究科, 教授 (50164835)
藤本 剛 秋田経済法科大学, 経済学部, 教授 (00181397)
小野寺 淳 東北大学, 大学院・国際文化研究科, 助手 (50292206)
|
Keywords | 中国の経済技術開発区 / 高新技術産業開発区 / 国有企業 / 中国の地域産業 / 外資導入 / 郷鎮企業 |
Research Abstract |
本年度に実施した現地での日中共同研究会及び訪問研究、日本での公開日中経済研究セミナー、内部研究会及び文献・資料分析を通して、以下のような認識を深めることができた。 1.煙台地域では産業構造転換は顕著ではない。各種の開発区では、誘致された外資系企業とそれに牽引されて新しい産業が興っている。だが、その産業勃興は必ずしも産業構造高度化を意味しない。開発区以外では新産業の勃興も既存産業の質的進展も殆ど見られない。 2.各企業とも先端技術の移植・開発・連携・伝承・習得がきわめて弱い。開発区以外では、伝統産業と新産業との間には協業・分業、技術的連携、原料調達、製品販売などの経済上の構造的連関が見られない。他方、消費行動では市場経済への依存が着実に進展している。 3.外資企業とそれと結合した企業、大型国有企業・集体企業の企業層と民間形成の私企業・集体企業、中小企業、農村企業などの企業層との両極分解が進行している。前者は益々資本・資産を集積し後者はそれらを喪失して弱体化している。 4.農業は小康状態だが農外産業は停滞している。農村の資本・資産蓄積力は弱体で、市場をリードする経済主体が育っていない。農民の資本蓄積→郷鎮企業起業→都市への企業展開の見解には根拠がない。事実は、都市での出稼ぎ→出稼ぎ者の送金・帰村が、農民の資金蓄積の主流である。農村では銀行融資・財政資金・証券等の直接資金調達等の資本・資金調達方式は殆ど機能していない。農民の資金調達方式は家族単位の余剰資金の貯蓄しかない。 5.中国の経済は、上海など一部の突出した市場経済とその他の多くの地域の緩やかなテンポでの市場経済とが、非同質的・非画一的な強い地域性を維持したまま一つの複合体となっている。経済格差は、都市と農村、大企業と中小企業・私営企業間で拡大している。
|