1998 Fiscal Year Annual Research Report
時間分解光電子分光法による気相溶媒和系の緩和ダイナミクスの研究
Project/Area Number |
09440210
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
永田 敬 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (10164211)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佃 達哉 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 助手 (90262104)
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Keywords | 分子クラスター負イオン / 時間分解光電子分光 / エネルギー緩和過程 / 電子構造異性体 / 異性化過程 |
Research Abstract |
気相の分子集合体(気相クラスター)におけるエネルギー緩和過程や異性化過程を実時間で観測することを目的として、本年度は以下の項目について研究を進めた。 1. 気相クラスター負イオンの電子構造・幾何構造 気相クラスター負イオンには、異なる電子構造を持つ構造異性体(electronic isomers)の存在が予想され、これらはクラスターに特徴的な「構造の揺らぎ」を実時間で観測するために最適な系である。これまでに研究例の殆どない気相クラスター負イオンの電子構造異性体の存在、および異性化過程を明らかにするために、実験(光電子分光)と理論(ab initio計算)の両面から研究を行った。この結果、(CO_2)_n^-,[(CO_2)_nH_2O]^-,[(CO_2)_nMeOH]^-について電子構造異性体が存在することを実験的に示し、ab initio計算によりその構造を推定した。さらに、特定のサイズのクラスターでは異性化のエネルギー障壁が極めて低く、[CO_2^-・H_2O(CO_2)_<n-1>]【double arrow】[C_2O_4^-・H_2O(CO_2)_<n-2>]の過程によって構造が揺らいでいることを実験的に明らかにした。 2. フェムト秒レーザーを用いた光電子分光 時間輻360fsのフェムト秒レーザーシステムを用いて、ポンプ-プローブ法による時間分解光電子分光を行い、(C_6F_6)_n^-の光励起状態の緩和を調べた。この結果、760nm〜820nmで光励起された(C_6F_6)_n^-の緩和寿命は1.5pS程度であることがわかった。この寿命は分子間振動モードへのエネルギー再分配の速度を反映しており、そのサイズ依存性等から、特定のサイトに位置する溶媒分子に対するエネルギー散逸時間の指標であると結論した。
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[Publications] T.Tsukuda et al.: "Formation of N_3O_3 anion in (NO)n^- : Photoelectron spectroscopy and ab initio calculations." Chemical Physics Letters. 295. 416-422 (1988)
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[Publications] T.Tsukuda et al.: "Electronic isomers in 〔(CO_2)_nROH〕^-cluster anions.I.Photoelectron spectroscopy." Journal of Chemical Physics. (印刷中). (1999)