1997 Fiscal Year Annual Research Report
病原性酵母カンジダを攻撃目標とする抗菌性配糖錯体の開発
Project/Area Number |
09554039
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
矢野 重信 奈良女子大学, 理学部, 教授 (60011186)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐野 浩 協和発酵KK, 研究開発部, 次長
三方 裕司 奈良女子大学, 理学部, 助手 (10252826)
棚瀬 知明 奈良女子大学, 理学部, 助教授 (50207156)
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Keywords | インターカレーター / 配糖錯体 / アミノ糖 / 抗菌性 / ニッケル / 亜鉛 |
Research Abstract |
1.最近一般に酵母が糖質を炭素源としていることに着目し独自に開発した配糖錯体の中でアミノ糖の一つであるD-グルコサミン(D-GlcN)とエチレンジアミン(en)あるいはトリメチレンジアミン(tn)とのN-グリコシドを配位子として持つ下の図に示したNi(II)配糖錯体[Ni(D-GlcN-en)2]^<2+>および[Ni(D-GlcN-tn)2]^<2+>が病原性酵母Candida albicansの生育を有効に阻止するという重要な現象を見いだした。研究ではこの発見を手掛かりに、アミノ糖部分に高分子化可能なモノマー官能基を導入し、それらの配糖錯体を秩序正しく高分子化し、新しいタイプの抗薗性ポリマーの開発を目的としている。 2.本年度は、上記のアミノ糖のNi(II)配糖錯体が細胞の代謝系に直接作用していることが示唆されたので、今回細胞壁形成過程におけるキチン分解系に関与する酵素(キチナーゼ)の酵素活性に対する錯体の影響を酵素化学的に詳細に検討した。以上の酵素化学的な検討により、配糖錯体が酵母細胞の細胞壁の形成に重要な役割を担っている酵素のキチナーゼを括抗阻害することが明らかとなった。代表的なキチナーゼの阻害としてallosamidineおよびその誘導体あるいはstyloguanidineが知られているが、例は少なく本研究の知見は金属錯体を素材とする新しいタイプの薬剤の開発にとって有用な情報とみなされ今後の発展が期待される。 3.現在、配糖錯体の高分子化ならびに亜鉛(II)を中心金属とするD-グルコサミンの配糖錯体の開発を進めている。各種測定の結果から、Zn(II)錯体はNi(II)錯体と同様に中心金属原子1つにつきGlcNとジアミンによるN-グリコシドが三座配位子として二分子配位した六配位八面体構造をとっているものと推測している。亜鉛(II)が生体内で重要な役割を担っていることから、アミノ糖を配位子に含むNi(II)錯体が抗菌活性を発現したように、新たな機能発現の可能性も含めて今後の展開が期待される。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] 矢野重信: "Trimanganese complexes with a linear MnIIMnIIIMnII assemblage bridged by carbohydarates" Chem.Commun.997-998 (1997)
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[Publications] 棚瀬知明: "Peroxo-Bridged Dinuclear Cobalt (III) Complex Containing N-Glycoside Ligands from Tris (2-aminoethyl) amine and D-Glucose and its Reversible Dioxygen Binding Property" Chem.Commun.2115-2116 (1997)
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[Publications] 矢野重信: "Unprecedented Chiral Inversion around the Seven-coordinated Cobalt Center Induced by an Interaction between Sugars and Sulfate Anions" Inorg.Chem.36・19. 4187-4194 (1997)
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[Publications] 加藤昌子: "π-Stacking Structure of [Pt (2,2'-bipyridine) (ethylenediamine)] 2+ as its Hexafluorophosphate Salt" Acta Crystallographica.C53. 837-838 (1997)
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[Publications] 三方裕司: "Synthesis,Characterization,Intercalation with DNA,and Antitumor Activity of a cis-Dichloroplatinum (II) Complex Linked to an Intercalator via one Methylene Chain" Bionorg.& Med.Chem.Lett.7・8. 1083-1086 (1997)
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[Publications] 棚瀬知明: "Seven-coordinate Manganese (II) Complexes with a Cage-type N-Glycoside Ligand. Configurational Switch Depending on Counter Anions" Inorg.Chim.Acta.266. 5-7 (1997)