1997 Fiscal Year Annual Research Report
翻訳エンハンサー因子を用いた植物新機能ベクターの開発
Project/Area Number |
09554054
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
小保方 潤一 北海道大学, 大学院地球環境科学研究科, 助教授 (50185667)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 賢一 サントリー株式会社, 基礎研究所植物工学グループ, 研究員
戸栗 敏博 キリンビール株式会社, 基盤技術研究所, 主任研究員
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Keywords | 植物ベクター / タンパク質合成 / 翻訳エンハンサー / mRNA / 5′非翻訳領域 / タバコ / psaDb / ポリ(U) |
Research Abstract |
筆者らは、5'非翻訳領域に挿入されるとmRNAの転写や安定性には影響を与えずに翻訳効率のみを促進させる塩基配列、所謂"翻訳エンハンサー配列"を形質転換タバコの実験系で2種類見い出した。本研究では、この2種類の翻訳エンハンサーの作用機構を解明するとともに、これらの機能性配列を植物ベクターの作成に応用し、プロモーターの組織や器官に対する発現特異性には影響を与えずにコードされている蛋白質遺伝子の発現量のみを増大させる新しい技術の確立を目的としている。 本年度の研究では、psaDb型翻訳エンハンサー配列については、小麦胚芽由来のIn vitroタンパク質合成系等を用いてその機能に必要なシス因子群の解析を進めてきたが、まだ明確な結論を得るには至っていない。またこれと並行して、実用化の基礎研究としてイネのグルテリン遺伝子プロモーターに連結した大豆のグリシニン遺伝子にこのpsaDb型翻訳エンハンサー配列を挿入し、形質転換植物を作成した。 ポリ(∪)型の翻訳エンハンサーについては、ウサギ網状赤血球や小麦胚芽由来のin vitro翻訳系、タバコ培養細胞やアフリカツメガエル卵母細胞の翻訳実験系等では顕著な翻訳促進効果はみられなかった。一方、パーティクルガンを使ってタバコ植物の葉組織や幼苗に直接キメラ遺伝子を導入し、その一過性の発現を解析したところ、形質転換タバコでみられたものに近いエンハンサー効果が観察されたので、この実験系を使って翻訳エンハンサー効果の配列依存性や組織/器官依存性に関する解析を進めている、これまでのところ、(1)(U)_<20>よりも(U)_<33>のほうがエンハンサー効果が強い、(2)(G)_<20>,(A)_<20>や(C)_<20>のホモポリマーではエンハンサー効果はみられない、(3)(U)_<20>や(U)_<33>によるエンハンサー効果は植物組織の生理的状態によって変動しているらしい、といった知見がえられている。
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[Publications] Yamato、Y., Kondo、Y., Kato、A., Tsuji、H and Obokata、J.: "Light-responsive elements of the tobacco PSI-D gene are located both upstream and within the transcribed reqion." The Plant Journal. 12(2). 255-265 (1997)