Research Abstract |
平成9年度は200℃までの水熱・電気化学的合成した炭酸アパタイトの粒子形態および状態分析を行い,合成条件と祈出結晶との関係を評価した。平成10年度は反応速度論的研究より,この水熱・電気化学的析出現象の機構解明を試みた.電解液は従来より用いている疑似体液よりマグネシウムを除いた組成を用い,電流は12.5mA/cm^2にし,水熱合成器(耐熱耐圧瓶)を用いて電解液温度は100,150,200℃で、電解時間は10分〜2時間とした。試料電極には幅20mm、高さ20mm、厚み0.5mmの純チタン板を用いた。重量増加すなわち析出物量は電流負荷時間の経過に伴い、増加した.負荷時間の平方根に対し,直線回帰した場合,150℃での増加が最も傾きが大きく,次いで100℃,200℃の順であり,それぞれ,8.92,6.04,5.38mg/min^<1/2>であった.析出開始までの誘導期間は100℃が7.2分,150℃が5.3分,200℃が1.9分と温度が高い方が短時間であった.これらの析出物は、XRD図形の測定結果によればすべてc軸に配向したハイドロキシアパタイトであり、配同性は100℃および150℃の場合,負荷時間の経過とともに大きくなったが,200℃での配同性は最も低く,負荷時間の経過による変化は認められなかった.電解放射走査型電子顕微鏡観察より,ハイドロキシアパタイトの六角柱状結晶は負荷時間の経過とともに大きくなり,六角形の一辺の長さおよび長軸方向の長さは、負荷時間の平方根に対し直線的に増加し,電解液温度が高い方が成長速度が大きかった.また,100℃および150℃の場合,基板に対しほぼ垂直に長く成長し,長軸方向の成長速度の方が六角形の一辺の長さ,すなわち軸の太さの成長より大きかった.一方,200℃の場合,基板に対する角度はバラツキがあり,長軸方向と太さ方向は同じ成長比率であった.以上のことより,針状のハイドロキシアパタイト単結晶がc軸に沿って細長く成長するのは拡散律速であり,基板に対する成長の傾き,すなわち配向性は電解液温度により変化し,電流負荷時間ととも100℃および150℃では配向性が大きくなるものと考えられた.
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