父親の家庭での役割と子どもの心理的発達及び家族アイデンティティとの関連

1997 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 09610105
• Research Category: Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
• Research Institution: Chiba University
• Principal Investigator: 宮下 一博 千葉大学, 教育学部, 助教授 (60144789)
• Co-Investigator(Kenkyū-buntansha): 尾形 和男 群馬社会福祉短期大学, 教授 (10169170)
• Keywords: 父親の協力 / 母親のストレス / 子どもの社会性 / 父親の成長・発達

Research Abstract

(1)子育てしている家庭の父親の母親への協力が母親のストレスにどのような影響力を持つのか、(2)父親の協力が子どもの社会性の発達とどのような関連を有するのか、(3)父親の協力は父親自身の成長発達とどのように関連するのか、という3点を吟味するために、まず、児童を持つ父親と母親を対象に、家事や子育てに対する父親の協力を尋ねる質問紙(尾形,1993)、母親の精神的ストレスを測定する質問紙(田中,1995)、児童の社会性を測定するS-M社会生活能力検査、父親の成長・発達を測定する質問紙(柏木・若松,1994)等を実施して、検討を行った。そして、(1)父親の「夫婦間のコミュニケーション」への関わりが高いほど母親のストレスが低いこと、(2)父親の「家事への援助」が高く、かつ母親の「集中力」高・「孤立感」低のグループの子どもの社会性得点が高い、父親の「夫婦間のコミュニケーション」への関わりが高く、かつ母親の「集中力」高・「孤立感」低・「自己閉塞感」低のグループの子どもの社会性得点が高い、父親の「子どもとの交流」が高く、かつ母親の「集中力」高・「孤立感」低・「自己閉塞感」低のグループの子どもの社会性得点が高いこと、(3)父親の「家事への援助」や「夫婦間のコミュニケーション」の程度が高いほど、父親自身の成長発達の程度が高い、またその際、「専業主婦家庭」では「夫婦間のコミュニケーション」が、「共働き家庭」では「家事への援助」が高いほど成長発達得点が高いこと、などを見いだした。
次に、同様の調査を、幼児を持つ父親・母親を対象に実施した。そして、上記の目的(1)と(2)については、ほぼ類似の結果が得られたが、(3)については、父親の「家事への援助」が高いほど父親の成長発達が高いという結果が得られ、若干傾向の異なる結果を示した。これを含む両研究の結果の差異について、子どもの発達段階等の観点から考察を加えた。

Research Products

• [Publications] 尾形和男・宮下一博: "家族システムの中の父親の役割(I)-父親の協力と母親の精神的ストレスおよび児童の社会性の発達との関係-" 日本教育心理学会第39回総会発表論文集. 74 (1997)
• [Publications] 宮下一博・尾形和男: "家族システムの中の父親の役割(II)-父親の協力と自己の成長発達との関係-" 日本教育心理学会第39回総会発表論文集. 75 (1997)
• [Publications] 尾形和男・宮下一博: "家族システムの中の父親の役割(III)-父親の協力と母親の精神的ストレスおよび幼児の社会性の発達との関係-" 日本発達心理学会第9回大会発表論文集. 349 (1998)
• [Publications] 宮下一博・尾形和男: "家族システムの中の父親の役割(IV)-幼児をもつ父親の協力と自己の成長発達との関係-" 日本発達心理学会第9回大会発表論文集. 350 (1998)