1999 Fiscal Year Annual Research Report
青年期の心理的成長に及ぼすエンカウンター・グループの効果と過程に関する研究
Project/Area Number |
09610153
|
Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
平山 栄治 青山学院大学, 文学部, 助教授 (10289340)
|
Keywords | エンカウンターグループ / グループ過程 / グループ発達段階 / 心理的成長 / 成長メカニズム / 青年期 / フィードバック / 精神分析 |
Research Abstract |
エンカウンターグループにおける心理的成長メカニズムの基本は、メンバー間に、言語的・非言語的・意識的・無意識的コミュニケーション行動が相互に展開し、それらの相互作用がフィードバックを与え合う効果を引き起こし、それが個人に今まで意識化されていなかった自己経験を意識化する機会を提供することにあると考えられる。本人の内的課題が、エンカウンターグループを舞台として再現されると考えられる。ある青年は、幼少期に体験した心的葛藤をグループで再現し、当時の過換気症候群を正にグループ場面で再現した。その中で、彼女にとって、人に心を開くこと、しかし、そうした相手を失ってひとりぼっちになっていくという葛藤をより意識的に再体験し、本人がそれまで意識的に体験することが困難であった内的経験をいくらかでも統合する契機となったと考えられた。 従来、エンカウンターグループ研究は来談者中心療法あるいはロジャース派の研究文脈で行われてきている。しかし、こうした成長メカニズムは、現代精神分析学における治療者と患者との相互作用を理解する上での転移・逆転移論とも密接に関わるものであると考えられた。とりわけ、転移と逆転移の相互交流を通して、クライエントが内的葛藤を心理療法場面で再演するという英国対象関係論やクライン派精神分析が近年解明している研究テーマとも非常に関連する現象であると考えられた。今後、更にエンカウンターグループでの個人の心理的成長と人格変化についての事例的検討を深めつつ、現代精神分析理論やクライン派精神分析についての最近の研究成果についても検討を加えることで、エンカウンターグループにおける個人の心理的成長メカニズムを更に解明していくことができると考えられる。
|