1998 Fiscal Year Annual Research Report
早産児の心理・生理的特徴とアタッチメント形成に関する研究
Project/Area Number |
09610155
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Research Institution | Tsurumi Junior College |
Principal Investigator |
斎藤 晃 鶴見大学女子短期大学部, 保育科, 助教授 (10225691)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
多田 裕 東邦大学, 医学部, 教授 (90197369)
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Keywords | 早産児 / 気質 / ブラゼルトン新生児検査 / 心拍 / 母子相互交渉 / アタッチメント |
Research Abstract |
【目的】早産児は脆弱であるが故に,その行動特徴が生後の母子相互交渉に特有な影響を与える。本研究の目的はブラゼルトン尺度(NBAS)の結果を行動特徴の一部と考え,これが生後1年間の母子相互交渉に与える影響を検討することにある。児にとって最大の環境変化は出生と退院であり,この2時点において環境に対する児の適応能力が発揮される。そこで本報告では,早産児の退院直前・直後におけるNBASの結果を満期産児と比較して報告する。 【方法】被験児:41名の母親にNBASを依頼し,10名(男児6名,女児4名)から協力を得た。平均在胎日数は234.2日(SD17.90)平均出生体重は1985.4g(SD433.61),出生1分後,5分後のアプガー指数の平均は6.3,8.5であり,退院時の在胎換算日齢の平均は269.1日(SD12.19),平均体重は2531.3g(SD134.04)であった。 手続き:退院直前1週間以内(在胎換算平均270.0日,SD18.57)に病院内で1回目,退院後1週間以内(在胎換算平均277.4日,SD19.79)に2回目のNBASを行った。いずれも1名の認定評価者がNBASを施行した。 【結果と考察】素点をLester(1984)に従って7クラスター値化し,これを児の気質特徴とした。ただし,慣れは欠損値が多いので分析から除外した。斎藤・多田(1998)が得た満期産児を統制群として比較した。早産児・満期産児の平均値に関してMann-Whitney検定を行ったところ,方位1回目,運動1回目,状態幅1回目,状態調整1回目,誘発反応1回目に有意差が認められ,いずれも満期産児群の方が高得点を示した。方位は外的刺激に対する視聴覚反応の総合的能力であり,満期産児の方が対社会的反応性が高いことを意味する。運動は身体運動の成熟性を意味し,満期産児の方が明らかに成熟していることを意味している。状態幅は状態の変化が大きいことを意味し,数値が大きいほど啼泣一鎮静間の状態変動が多いことを意味する。早産児の方が状態幅が低いが,これは啼泣性の低さに起因する。早産児の啼泣性が低いことは,児の脆弱性を反映した結果である。状態調整は主に啼泣状態から鎮静に至る能力を現しており,満期産児の方が高い調整性を示した。これは育てやすさに通じる特徴であり,母子相互交渉に影響を与える要因である。誘発反応は異常反射の総数であり中枢神経系の状態を表している。早産児は明らかに神経系の成熟性が低いことを意味している。概して,早産児は満期産児よりも成熟性が低く,この脆弱性は環境に影響を与える要因として考慮すべきである。今後はこの早産児の特徴が生後1年間における母子相互交渉にどのような影響を与えるかを検討する予定である。
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