1997 Fiscal Year Annual Research Report
きだみのる=山田吉彦の仕事にみる戦後知識人と社会学
Project/Area Number |
09610181
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
中島 道男 奈良女子大学, 文学部, 助教授 (10144635)
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Keywords | 知識人 / 社会批判 / 内在的社会批判 / 九〇度の転向 / 近代主義 |
Research Abstract |
きだみのるに関連する図書・資料収集と、知識人としてのきだみのるの位置はいかなるものかを検討するための評価軸の改定、ということを今年度の課題とした。後者は、「知識人と社会批判」というテーマに絞り込みうるだろう。これについて、きだみのるの言説自体はひとまず措き、まず、日本の知識人をめぐる言説の検討をとおして魅力的な社会批判のあり方を探ろうとした。現代の知識人の存在様式への批判にもとづく小浜逸郎の議論からは、ロマンチックな観念牲/普通の日常生活という対立批判、観念的な自己還帰に終わるラディカリズム批判が注目に値する。この脈絡で検討すべきは、吉本隆明の転向論とりわけその“九〇度の転向"であろう。この第三のタイプの転向は、「共同体xを批判する原理は共同体xとまったく無縁なところからもってこられるのではない。したがって、社会批判をおこなう知識人は、自分が批判する共同体に精神的にあくまで所属したままである」というかたちで一般化されようが、小浜の目指す社会批判の方向牲こそ、第三の転向の場合にみられる社会批判のあり方ではないだろうか。知識人が社会批判をおこなうときのポジションをめぐる問題をさらに深めるために、近代化と知識人をめぐる問題、とりわけいわゆる近代主義をめぐる議論を検討していくと、魅力的な社会批判といえるためには、知識人が論じるその対象が「その内部に自己をふくんだ集団」であることが必要という論点が得られる。魅力的な社会批判にかんする以上の議論を、ウォルツァーの主張を参照しながらreflexivityを有した社会批判としてまとめたうえで、この意味での内在的社会批判について整理をおこなった。八王子のムラに住まい“東京の知識人"を批判しながら社会批判をおこなったきだみのるの位置は、以上のような観点から考察できるのではないだろうか。
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Research Products
(1 results)