1997 Fiscal Year Annual Research Report
日本における女性の職業キャリア形成史の研究-人事労務管理史の変遷をふまえて
Project/Area Number |
09610189
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tsuru University |
Principal Investigator |
野畑 眞理子 都留文科大学, 文学部, 教授 (00198607)
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Keywords | 日本的経営 / 人事労務管理 / 女性労働 / キャリア形成 / コース別人事労務管理制度 |
Research Abstract |
高度経済成長期には、企業とりわけ大企業では、女性を短期の補助的低賃金労働者と位置づけて、男性とは別の人事労務管理を行っていた。そのため、女性の能力開発や活用は例外的な女性を除いてほとんど考えられていなかった。低経済成長期になると、厳しい経営環境の中で、企業は、あらゆる女性雇用者をいかに戦力として活用していくかを重要な経営課題とするよう迫られることになった。労働省の調査によれば、1970年代後半以降、女性の職域拡大や能力開発のために何らかの措置を実施する企業が徐々に増加し、1980年代には女性の活用方針に関しても男女区別なく扱うとする企業が増大している。つまり、低成長期になって、企業ははじめて女性全体の人事労務管理に真剣に取り組むようになり、能力と意欲に応じて、能力開発、育成、戦力化を試みるようになったのである。その結果、女性が職域拡大や能力発揮の機会を与えられ、それに応じる中でキャリアを形成してきたと考えられる。ただ、性別の人事労務管理は依然として続いており、男女それぞれの集団内部で個々人を最大限に活用しようとするものであったため、女性の職域拡大や能力発揮は必ずしもキャリア形成や処遇に結びつかなかった。 1980年代半ばに、大企業を中心に均等法対策を兼ねて導入が進んだコース別人事制度によって、従来一つであった職能資格制度を複数化し、コース別に一貫した管理が可能となった。企業は以前は運用上行っていた男女別人事労務管理を、「コース別」人事労務管理として制度化したのである。このようにコース別人事制度によって、女性差別が固定化されることになったが、均等法や国の指針は差別是正には全く機能していないばかりか、コース別人事制度を擁護するものとなっている。コース別人事制度は、コース分けの基準自体に矛盾が多く、また、女性総合職の人事労務管理も確立していないため、彼女たちが働き続けるには困難が多い。
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