1997 Fiscal Year Annual Research Report
近世後期西蝦夷地ヨイチ場所におけるアイヌ民族の鮭漁に関する基礎的研究
Project/Area Number |
09610324
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | History Museum of Hokkaido |
Principal Investigator |
山田 健 北海道開拓記念館, 企画部, 主任学芸員 (10113474)
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Keywords | 林家文書 / ヨイチ場所請負人 / ヨイチアイヌ / 余市川 |
Research Abstract |
鮭漁はアイヌ民族にとっては食糧資源の確保のうえからも主要な生業であり、なかでも鮭の遡上する河川は、彼等にとって重要な漁場であった。本研究は近世後期、西蝦夷地ヨイチ場所を事例に場所請負人林家のもとでの鮭漁に実態について解明することにあり、その基礎的史料が林家文書であることから、初年度の9年度は関係資料の所在状況の確認とその概要の把握につとめた。 調査によれば、林家文書には文政年間、ヨイチ場所を請負以前の厚岸場所などの史料も一部含まれ、これらは関係者により、およそ三群に分割され、そのうちの一群が余市町に寄贈され、現在、余市町文化財に指定され、余市水産博物館に保管されている。また、その一部が『余市町史』第一巻史料編として刊行されている。他の二群のうち、一部が北海道立図書館および札幌市中央図書館に収蔵され、さらに余市町および小樽市在住の林家関係者にも保存されている。なお、北海道立文書館がマイクロフイルムとして所蔵しているのは、余市町所蔵史料の一部であることなども判明した。 さらに9年度は、主として余市町に収蔵されている史料を中心に採録可能なものについてデータの集積をはかり、整理をおこなった。それによれば明治2年(1869)、場所請負制度廃止後の同3、4年においても余市川および余市川川口に近い海面において林家による鮭漁が行われ、船頭を中心とした幹部には、春鰊漁においてその立場であった者が従事し、一般漁夫および漁労作業、製造加工などにはヨイチアイヌ男女合わせて111、2名が使役されるなど、近世から近代にかけてのヨイチ場所の鮭漁の経営形態の一端が解明されつつある。
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