1999 Fiscal Year Annual Research Report
近世後期西蝦夷地ヨイチ場所におけるアイヌ民族の鮭漁に関する基礎的研究
Project/Area Number |
09610324
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Research Institution | The Historical Museum of Hokkaido |
Principal Investigator |
山田 健 北海道開拓記念館, 総務部, 主任学芸員 (10113474)
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Keywords | 林家文書 / 西川家文書 / ヨイチアイヌ / ヲショロアイヌ / ヨイチヲショロ秋味建場議定書 / 西川家高島分店日誌 |
Research Abstract |
鮭漁はアイヌ民族にとっては食糧資源の確保のうえからも主要な正業であり、なかでも鮭のル遡上する河川は、彼等にとって重要な漁場であった。本研究は近世後期、西蝦夷地ヨイチ場所を事例に場所請負人林家のもとでの鮭漁の実態について解明することにあり、その基礎的史料が林家文書である。また、過年度の調査により小樽市博物館所蔵の西川家文書および林家文書より、ヨイチ場所に隣接したヲショロ場所アイヌがヨイチ川の鮭漁に従事していたことが判明したことから、さらに西川家文書を収蔵している滋賀大学経済学部附属史料館において関連史料調査をおこなった。 同館にはヲショロ場所側の「安政五年七月ヨイチヲショロ秋味建場議定書」控が収蔵されており、林家文書にある同議定書控との比較検討をおこなった。これより、1.ヲショロアイヌのヲショロ場所での秋味場はシヲヤ、ツコタンとし、ラムシマナイでは操業しない。2.ヨイチアイヌのラムシマナイでの秋味建網はかまわないが、シヲヤ、ツコタンでは操業しない。3.ヲショロアイヌがシヲヤ、ツコタンで漁獲した鮭は、すべてヲショロ運上家に納める。4.ヲショロアイヌは場所での鮭漁終了後、ヨイチ川支流のノホリ川上で、網持アイヌおよび縁者が飯料取りしてきたことは、従前通りとする。5.従前通りヨイチ場所での秋ヲムシャにヲショロアイヌを招き、互いに和熟をはかることなど、当時のヨイチ・ヲショロ両場所のアイヌによる鮭漁操業の一端が判明した。 ほかに明治17年〜23年の西川家忍路支店高島分店日誌より、春の鰊漁および秋の鮭漁の経営形態が旧制度廃止前後のヨイチ場所での経営方式に類似していることが明らかとなった。
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Research Products
(1 results)