1997 Fiscal Year Annual Research Report
近代フランス民衆思想の形成-19世紀パリの労働者を中心に
Project/Area Number |
09610375
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
赤司 道和 北海道大学, 文学部, 教授 (90159319)
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Keywords | 19世紀 / パリ / 労働者 / 労働 / 労働習慣 / 生活習慣 / 社会主義思想 / 共和主義思想 |
Research Abstract |
本研究の目的は、19世紀前半の都市の民衆、特に七月王政期のパリの労働者を中心に、その政治意識・社会意識の解明ことにある。そのさい共和主義思想と社会主義思想の受容という問題を、労働者の生活意識・労働意識との関連で、「民衆による思想の読み変え」という視点を基軸に検討する。基本的史料は(1)都市労働者の手による小冊子と労働者向けの新聞の記事と(2)共和主義・社会主義諸潮流の発行した著作物・新聞・小冊子である。(2)に関しては主要なものは仏語で復刻され、また翻訳されたものも存在する。(1)の史料は、邦語・仏語ともに活字となっていない。本年度はひとつには、労働者の小冊子10数点を訳出した。また労働者新聞L'Artisan紙、La Ruche Populaire紙とL'Union紙の全記事のタイトルを抽出し、扱われた問題点毎に分類した上で、労働者の政治意識・社会意識に関する論説を訳出している。以上は未刊行史料であり、その訳出と問題点毎の分類には、膨大な時間が必要である。これらの訳文は、ワープロのファイルに編成し、検索可能とする。このファイルをもとに、今後以下のような作業を行う。具体例をあげる。L'Artisan紙は創刊号の冒頭で「社会の最も多数で有益な階級は、労働者階級である」と述べている。これはサン=シモンの語法に「有益な階級」という表現をつけ加えたものである。なぜ「有益」かを、彼らの労働意識・生活意識に関連させてその後の文脈で説明している。これを労働者による「読み変え」ととらえ、そのテキスト群を抽出し、これを一定の文脈の単位で語法ごとに再編成する。この作業によって、諸思想潮流の理論が、いかにして労働者独自の労働観や社会観に基づき「読み変え」られ受容されたか、を明らかにしたい。
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