1997 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09610400
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kagoshima Women's Junior College |
Principal Investigator |
田中 優 鹿児島女子短期大学, 教授 (40132526)
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Keywords | パウペリスムス(社会の貧困) / 権威主義的ゲマインシャフト秩序体制 / 同権的ゲマインシャフト秩序体制 / 国家的統合 / 社会保険 / 社会主義労働運動 / 改良主義 |
Research Abstract |
領邦国家による資本主義的市場競争原理の導入と中間権力の打破は、都市と農村の下層社会層を封建的結びつきから解放し、三月前期のドイツでパウペリスムス(社会の貧困)が発生した。この時代に始まる領邦国家の社会政策は、困窮と方向性喪失に陥った下層社会層を国民として領邦国家に結びつけ、社会を安定化することをめざした。 社会政策を用いてのこの国家的統合は、権威主義的ゲマインシャフト秩序体制の形成として捉えられる。この体制は、下層社会層(労働者)に効率・合理の業績主義的価値観を注入する為に、社会に権威主義的自助組織を形成し、それを国家が統制するあり方である。これが十九世紀の国民国家形成の基軸をなした。 しかし、この方向は十九世紀後半になると同権的ゲマインシャフト秩序の挑戦を受けた。その誘発要因は、社会主義労働運動を含めた政治と社会状況全体のなかに求められる。一八八0年代の帝国社会保険法の成立は、権威主義的ゲマインシャフト秩序勢力が同権的ゲマインシャフト秩序勢力をおさえて優位に立った表れである。 しかし、社会保険をはじめとした社会政策の実践は、権威主義的ゲマインシャフト秩序体制では労働者を帝国に結びつけるに有効でないことを明らかにした。更にこの実践は、社会主義労働運動をして、ゲマインシャフト秩序体制の権威主義を同権へと鋳直す改良主義へ変貌させて、同権的ゲマインシャフト秩序の勢力は拡大した。 国家的統合の基軸が、権威主義的ゲマインシャフト秩序体制から同権的なそれへと転換するのは第一次世界大戦においてである。戦争は、人的資源のより有効な活用のために権威主義よりも同権を要請して祖国援助法を生み、同権的ゲマインシャフト秩序体制の国民国家が成立したのである。
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