1997 Fiscal Year Annual Research Report
人骨および人骨付着昆虫遺体からみた古墳時代モガリの研究
Project/Area Number |
09610407
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
田中 良之 九州大学, 大学院・比較社会文化研究科, 教授 (50128047)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
金 宰賢 九州大学, 大学院・比較社会文化研究科, 助手 (70284560)
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Keywords | モガリ / 儀礼 / 古墳 / 古人骨 / 葬送 / 埋葬 / 国家形成 / 昆虫 |
Research Abstract |
平成9年度においては、まず、人骨出土古墳の文献を収集し、モガリと関係すると考えられている遺構を検討した。また、文献に記されたモガリの内容を検討し、これらの遺構がモガリに関連するかどうかの検討を行った。この作業はまだ継続中であるが、文献に記された「殯屋」は集落の内部かその近辺に設置されたというイメージであり、古墳における柱穴を「殯屋」と考える近年の学説とは整合しないという理解に至った。そして、むしろこれらの遺構は、葬送儀礼の一環としての立柱など多岐にわたる機能を考えるべきではないかという予察をもつに至った。 次に、古墳における人骨の出土状態を検討した。特に単体埋葬例の関節状態に注目してみると、低墳丘墓から前方後円墳まで関節状態にあるものがほとんどであることが明らかになった。すなわち、これらの関節部を固定している軟部組織が腐朽する前にモガリを終えて埋葬されることがほとんどであったことがうかがえた。 さらに、昆虫遺体を伴出もしくは付着する人骨を調査した。その結果、松山市葉佐池古墳出土人骨に付着しているのがハエの蛹であることから、九州大学所蔵資料および松山市埋蔵文化財センター保管の人骨付着の蛹を実体顕微鏡下で観察・写真撮影した。そして、九州大学嶌洪教授(昆虫学)の協力を得て種の同定を行い、ヒメクロバエ属の蛹であることを明らかにした。この属の生態は、腐肉に卵を産み付けるというものであり、ハエは暗所では活動しない。したがって、モガリは、遺体が腐敗を始めるまでは行われており、しかも棺内のような暗所ではなく、ある程度明るさのある場所で行われたことになる。 これらの予備的成果は、英国理論考古学会において発表したが、10年度はさらに装飾古墳の葬送描写なども含めて総合的に結論を出す予定である。
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