1997 Fiscal Year Annual Research Report
集落・墓地・祭祀・土器から見た弥生時代から古墳時代への移行過程の研究
Project/Area Number |
09610414
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Nara National Research Institute for Cultural Properties |
Principal Investigator |
岩永 省三 奈良国立文化財研究所, 平城宮跡発掘調査部, 主任研究官 (40150065)
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Keywords | 弥生時代 / 青銅器祭祀 / 儀礼的贈与 / 財の労費 / 副葬 / 埋納 |
Research Abstract |
1、本年度には主として祭祀関係の資料を収集した。各地の祭祀遺跡の報告書から、本研究の目的に必要な情報を網羅的に収集した。特に研究上重要な資料については、所蔵・保管先に直接出向いて、実測図作成・写真撮影などの手段で記録化した。祭祀の諸類型・機能を研究対象とする語学、すなわち文化人類学・社会学・宗教学などにおける研究の成果を、事例研究は当然として、特に方法論のレベルで勉強・摂取するために、基礎的文献・論文等を日本語・外国語を問わず広く複写集成して学習した。 2、(1)弥生時代の青銅器祭祀の本質を理解するために、それらを供犠・贈与・ポトラッチなどのキーワードから考える近年盛んな説について検討した。儀礼的贈与あるいは財の浪費を、特定の人間への富の集中を抑制する機能を持つものと、既存の富の不均衡を維持する機能を持つもの、という二つの類型に区別する方が有効である。(2)青銅器の副葬や埋納をポトラッチ的意義を持つものとみなす論の来歴と妥当性について検討した。近年、副葬と埋納の意義に差を認めず、ともに行為者の世俗的意図を主体とするものと見なし、社会戦略上の役割を区別しない説が強い。しかしそれは妥当でなく、弥生時代から古墳時代における青銅器祭祀の出現と消滅、厚葬墓の出現といった現象は、社会組織の変動と関連させて理解すべきである。(3)弥生時代末から古墳時代前期の首長墓祭祀も一種の集団祭祀とみなせるが、青銅器祭祀とは合い容れない質的差異があり、異なる社会統合のシンボルの交替と見るべきではない。 3、平成10年度には主として墓地関係の資料を収集し、その構造に反映された人間集団の編成原理の変化とその原因について研究する予定である。
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